新・資本主義#1Photo by Yoko Akiyoshi

広がる格差、渦巻く労働者の怨嗟の声。こんな資本主義社会になったのは、経営者が強欲過ぎることが要因では?特集『トップMBAが教える 新・資本主義』(全5回)の#1では、サントリーホールディングスの新浪剛史社長が自身の学友でもある大学院大学至善館の野田智義理事長との対談の中で、問いに答える。(構成/ダイヤモンド編集部 杉本りうこ)

「経営者は強欲過ぎる」
渦巻く怨嗟の声にどう答える

野田 世界中が今、資本主義の未来を議論しています。それはもう、ファッションの流行のような勢いです。2020年のダボス会議(世界経済フォーラム)では、セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEO(最高経営責任者)が「私たちの知っていた資本主義というものは死んだ」と語っています。喪服のような黒い服で、資本主義の葬式に来たのだと。この資本主義の曲がり角を、新浪さんはどう認識していますか。

新浪 僕はすべからく資本主義が悪いと思ってはいない。「資本主義は死んだ」はスローガンとしてはいいけれど、資本主義自体が悪いのではない。ただ「どんな資本主義が悪かったのか」とは言える。それはなんだったか?金融資本主義が良くなかった。この事実はリーマンショックで明らかになったけれど、実はそれ以降も金融資本主義はずっと変わらなかった。

 しかし、サステナビリティという新しい軸ができて、「石炭を燃やして、エネルギーをつくって、サーバーを動かして、そのサーバーがインターネット社会をつくっているけれど、これはどうも世界を駄目にしている。このままだと世界がおかしくなっちゃう」という指摘が増えてきた。これらを支える金融も考え直しては、という考えが出てきた。こういった意味で金融資本主義をどう脱却するのか、長期的なコミットメントで社会に資する資本主義にどう変えていくのかという流れになっている。

野田 では金融資本主義を生み出した張本人は一体誰だろう?元々は1970年代のミルトン・フリードマンから始まっているけれど、90年代に僕らが出た米ハーバードビジネススクールのような学校も金融資本主義をつくった当事者だと僕は思っている。ビジネスの教育を受けてきた人間が金融資本主義にどう関わってきたのか。どう思いますか?