「目安箱」で私に伝えられたあきれた中身
批判回避の思い付き政策もさすがに限界か

第三の悪政 密告を奨励し職員を分断する「職員目安箱」の設置

「目安箱」といえば聞こえはいいが、小池知事が鳴り物入りで導入したこの箱は、職場の隣人同士による“密告情報収集システム”に他ならない。

 誰もがメールなどにより匿名で通知することができ、知事が必ず直接目を通し、秘密は外部には絶対に漏れない――。建前上そういうことになっているのだが、実態はどうか。

 寄せられた情報は取捨選択された後、総務局長に下ろされる。私は中央卸売市場次長だった頃、何度も総務局長に呼び出された。秘密裏に「目安箱」の中身を知らされ、適切に対応するよう指示を受けるのだ。

 しかし、その中身のくだらなさときたら脱力モノだった。市場の幹部職員が禁煙のフロアで隠れてたばこを吸っているだとか、他局から異動してきた上司が部下を怒鳴りつけて困っているだとか、これって知事に密告する話なのか。小池知事がブチ上げた築地市場移転計画の延期で七転八倒していた当時の私は、あきれ返るしかなかった。

 それ以外にも、上司や同僚の悪口や、誰と誰とが付き合っているなど、どうでもいい情報ばかりだった。どうせなら、小池知事自身の不正行為を密告する透明な箱を外部機関に設けていただきたいものである。

第四の悪政 巧妙な情報操作とイメージ操作

 小池知事の本質はテレビのメインキャスター(MC)であると、著書『ハダカの東京都庁』にも書いたとおり、メディアを操る術で彼女の右に出る者はほとんどいない。

 毎週金曜日に開かれる記者会見では、自分に好意的な記事を書く記者しか指名しない。登庁時や退庁時のぶら下がり取材では、質問に正面から答えずに論点をすり替えたり、質問に途中でぷいと背を向けて立ち去ることも珍しくない。

 一方で、新型コロナウイルス対策を語る際には常に、菅義偉政権との対立軸を意識して、自身の責任回避に余念がない。

 しかし最近は、その能力にも陰りが見えてきたように感じる。都独自の大規模ワクチン接種会場を巡って、右往左往ぶりが目立ったからだ。

 当初、大規模会場を設置しないとしていた小池知事だったが、他県が次々手を上げる中、突如、築地市場跡地でやると言いだした。

 かと思えば、築地跡地は東京オリンピック・パラリンピックの車両基地に使用するため6月末までしか使えないとして、今度はそのライブサイト会場の代々木公園で実施すると突如発表。これは、公園の樹木を剪定が必要だとする会場設営への批判を回避する魂胆が見え見えだった。

 批判をかわすための思い付き発言が、さらなる批判を引き起こし、その批判を抑え込むために、次なる思い付きを口にする――。この悪循環が止まらなくなってしまった。小池知事もついに焼きが回ったのだろうか、残念である。