「そもそもESは企業が選考しやすくするためのもので、学生には何のメリットもない制度だと思います。学生は1社、2社ではなく多数の会社にエントリーします。その度にESを作成するのは大変な負担です。しかも、今やマニュアル本が多く出回っていますので、型にはまった内容になってしまい、ESでは個性や人間性を見極めにくい状態です。こういった理由で廃止を決めました」

 同社は昨年10月、今年度(2022年度入社)の採用を開始した。ESの代わりにオンラインで名前と希望職種などを入力する。志望動機や自分の強みなどは一切必要ない。5分もあれば応募が完了するので、すでに2500人もの学生がエントリー済みだ。

就活で「エントリーシート廃止」に踏み切る企業が増えているワケ応募や面接はすべてオンラインで行うため、日本だけでなく海外からのエントリーも増えている

 応募した学生は、まずオンライン説明会に参加する。その後、希望者は面接にエントリー。そこから社員による一次面接が始まる流れだ。一次面接は、学生3人に対し社員が1人で対応。学生1人に対して長い場合だと1時間かけて様々なことを聞くこともある。説明会に参加した学生の大半はエントリーするので、2500人近い学生に対応していかねばならない。膨大な数だ。時間もコストもかかる上に、業務をも圧迫しかねない。その真意を聞いてみた。

「日本の製造業、特に弊社のようなものづくり企業は、後継者不足という課題を抱えています。後進が育たないと培ってきた技術を残せないと危惧しています。その打開策として、若くて意欲があり、理念に共感してくれる学生に入社してほしい。そう考えて決断しました。今も毎日、面接を行っていますが、学生の生き方、考え方をしっかり見て判断したいので、がんばっています」