また、このタイプは、本人は意識していないかもしれないが、自分の落ち込みを周囲にアピールするようなところがある。普通は叱られて落ち込んでいる自分を見せたくないとか、気遣ってくれる周囲の人たちに大丈夫だという姿勢を取るものだが、このタイプは落ち込んだ姿をまったく隠そうとしない。

 他人を気遣う気持ちの余裕がないということもあるが、疾病利得のようなもので、身を守るすべとして身に付けた行動パターンともいえる。疾病利得というのは、病気になることによって大目に見てもらえるといったメリットが生じることを指す。

 つまり、落ち込んでいればそれ以上周囲から責められることはないということを長年の経験から学習しているのだろう。自分を変える力、学ぶ力が乏しいため、周りが容赦してくれるのを期待する。そんな生き方が身に染みついてしまっているのだ。

落ち込みやすい人物への対処法

 このタイプに同情して励ましの声をかけたり、前向きに頑張るようにアドバイスしたりしても、効果がないことが多い。むしろ、こっちの言葉尻を捉えて、

「どうせ私は仕事ができないんだから、頑張ったって無理なんです」

 などとさらに落ち込むようなことにもなりかねない。

 本人は、自分のことだけで頭がいっぱいのため、こっちが親切心で言葉をかけているということが分からない。ゆえに、このタイプを励まそうなどと思わないことだ。変に刺激しないように、極力放っておくのがよい。

 ただし、このタイプが部下である場合は、関わらないわけにはいかない。仕事上、どうしても注意しなければならないときは、きつい感じにならないように言葉を選ぶ必要があるのはもちろんだが、どんなにやんわり注意しても、過剰に感情的な反応を示すに違いない。事情を知らない人がその様子を見たら、どんなにひどい言い方をされたのだろうと誤解する可能性がある。

 パワハラを疑われても面倒なので、必ず第三者がいるところで注意をするようにしたい。一般的には、「みんなの前で注意や叱責をするとメンツをつぶしてしまうから、個別に注意や叱責をすべき」といわれるが、密室から落ち込んだ表情で出てくるのを見られたりしたら、パワハラだと誤解されることになりかねないためだ。

 あるいはみんなの前は避けるにしても、信頼できる第三者に同席してもらうのもよいだろう。メンツをつぶさないためには、ライバル関係にあるような年齢の近い人物は避け、比較対象にならない年長者に同席してもらうのがよいだろう。パワハラと疑われるのが心配なときは、やりとりを録音しておくという防御策もある。

 こんなに傷つきやすく落ち込みやすいのではこの先やっていけないだろうと思い、鍛えてあげようと厳しいことを言ったりすると、トラブルになりかねない。せっかくの親切心による厳しさも通じないことが多いのだ。このような性格は長い年月をかけてつくられてきたので、一朝一夕で変えられるものではない。ゆえに、親切心からおせっかいを焼かないことだ。