“コミュニケーション他流試合”が禁じられた2年間

 しかし、コロナ禍によって、学生のコミュニケーションの様相は大きく変化した。アルバイトや課外活動はできなくなり、同質集団である授業やゼミに関してもリモート授業がメインとなった。2021年7月現在もこの状況は続いており、昨年2020年4月に入学した学生たちは、アルバイトや課外活動という“異質”な集団に飛び込んで「コミュニケーション能力」を鍛える機会をほとんど得られないままである。今後、大学生の環境が早期に改善されるとは考えられず、また、学生の「コミュニケーション能力」が劇的に上がっていくことも考えづらい。だとすれば、2024年度採用(多くが2020年4月の大学入学者)の新卒新入社員は、学生時代にコミュニケーション能力を訓練する機会が少なくなる世代である。企業はこの状況に対応するために入念な準備を行わねばならない。

 採用における合格基準は例年と異なる視点で考える必要があるだろう。例えば、「コミュニケーション能力」の評価を少しゆるめる、「コミュニケーション能力」以外の採用基準の評価を強化、追加するといった調整である。

 また、採用活動の変更、調整といった対策に合わせて、社内でも新入社員を受け入れるための準備を始める必要がある。不幸にも「コミュニケーション能力」を鍛えられなかった新入社員が入ってくるため、入社後の教育(どのように訓練するか)を考えなければならない。そしてまた、受け入れる職場の先輩社員たちにも「新入社員はコミュニケーションが不得手である」ことを理解してもらう必要がある。できるなら、先輩社員自身の「コミュニケーション能力」の向上も検討すべきだろう。

 現時点では、これらは一過性の対応になるのかもしれない。しかし、コロナの収束はまだ不透明である。なにより“コミュニケーション他流試合”が禁じられた2年間が、今後の学生の成長にどのような影響を及ぼすのかが全く分からない以上、“異質”間コミュニケーションは注視し続けるべきテーマである。