「仕事におけるコミュニケーション能力」の定義は?
つまり、学生が言う「コミュ力」の評価はバックグラウンドが似通った同質な集団内でのコミュニケーションにおける発信力・受信力の高さであり、企業が求める「コミュニケーション能力」は初対面や利益が相反する人との会話のように「異質」間における発信力・受信力を指している。このような認識のずれが就職活動をする学生と採用担当の間では存在し、企業が求める「コミュニケーション能力」の水準に学生の能力が満たないと感じられているのではないだろうか。
仮に、「仕事(現場)におけるコミュニケーション能力」を定義すると、「初対面や利益が相反する人といった“異質”間でもコミュニケーションができる力」と表現できる。この、企業が求める「仕事におけるコミュニケーション能力」を学生が培い、発揮している可能性がある場面はアルバイトやボランティアでの活動だろう。
マイナビの「学生のアルバイト実態調査(2021年)」*3 によれば、9割近い大学生が定期的なアルバイトをしている。その中には、他者と関わりのない仕事(アルバイト形態)もあるだろうが、多くの学生は自分たちとは“異質”な大人たちとコミュニケーションをとりつつ仕事を経験してきている。
*3 マイナビ「大学生のアルバイト実態調査(2021年)」=インターネット調査 調査対象:18~23歳の大学1年生~4年生 ※6年制大学、大学院生は除く、調査期間:2021年2月26日〜3月2日、有効回答数:1,346名
アルバイトとしての仕事体験は企業における仕事と違うのは当然であり、業務能力、責任感、リーダーシップなどの再現性を求めるのはいささか早計だろう。しかし、アルバイト体験の中には、本人と“同質”ではない、あるいは上下関係が存在する他者とコミュニケーションをすることが多くある。採用面接では、この点について学生と人事担当者との間で対話することで、企業の必須能力である“異質”間コミュニケーション能力の有無を推測できると私は考えている。