オバマ勝利となったアメリカ大統領選挙。オバマ大統領が、投票日直前にCNNに寄稿した国民に向けたメッセージは、「人を動かす」ということを考えるうえで、日本のリーダーたちにとっても、きわめて興味深い内容だった。
11月6日(米国時間)のアメリカ大統領選挙では、接戦の末、民主党のオバマ大統領が共和党のロムニー候補を破って再選された。アメリカでは、大統領選挙でもネットメディアが活躍するが、今回、注目されたのが、投票日の4日前の11月2日に、CNN.comに掲載された両候補の「米国、私のビジョン」と題したオプエド(意見寄稿)であった(オバマ大統領のビジョン、ロムニー候補のビジョン)。
大統領候補は投票日の前日まで、精力的に全米各地で遊説を行うが、テレビや新聞では、その一部が報道されるにすぎない。そんな中、この寄稿は、全米の有権者に対して、まとまった主張を発信できる最後のチャンスであり、両候補にとっては、さながら投票前の最後の演説との位置づけであったに違いない。
両候補のビジョンを比較すると、オバマ大統領のものは卓越している。一言一言が心に突き刺さり、話にグッと引き込まれる。実際に、CNN.comに連動したフェイスブックでの人気投票(11月8日時点)でも、66%の人がオバマ大統領のビジョンの方が優れていると投票している。
その理由を考えると、オバマ大統領のメッセージは、アラン・モンローの説得技法に則って話を展開している点とも関係が深い(詳細は拙著『思いが伝わる、心が動くスピーチの教科書』にて解説)。この技法は、アメリカ大統領が行う多くの演説で用いられており、聴き手の心をつかみ、具体的なアクションを促す際に絶大な効果を発揮する枠組みである。
これは、解散・総選挙を控えた日本の国会議員はもとより、企業経営者や公共団体のトップなど、人々を説得して動かす立場にある、あらゆる組織のリーダーにとって、参考になるスピーチの展開法であり、以下に解説を行っていきたい。