モンローの説得技法は、次の5つのステップに沿って展開する。1.注意の喚起、2.問題点の指摘、3.解決策の提示、4.未来像の視覚化、5.アクションの提起、の5つである。オバマ大統領は、次のような展開でビジョンを提起し、投票を訴えた。(CNN.co.jpの日本語訳を参考に要約)

1.注意の喚起

「この数日間、今世紀最大級の暴風雨が米国を襲った。亡くなった方々の死を悼む。そして、被害を受けた人々には、必要な限りの支援を約束する。アメリカは困難に見舞われた時にこそ、最大の良さを発揮する。私たちは、党派を超えて力を合わせ、この最も辛い時期を乗り越えるのだ。

 アメリカは4年前、二つの戦争と世界大恐慌以来の経済危機に陥っていた。しかし、力を合わせて改革に取り組み、ここまで立ち直った。まだ目的地には達していないが、確実に前進を続けている。6日の投票日には、根本的に異なる二つのビジョンのどちらかを選ぶことになる。私は、アメリカの繁栄の基礎は中間層の強さだと確信している。誰もが公平にチャンスを与えられ、等しく役割を果たし、同じルールに従うとき、国全体がより豊かになる」

 まず冒頭で、ハリケーン「サンディ」の被害にあった人々の心情を理解し、困った時こそ心を一つにし、助けを差し伸べることが大事であるとの信念を表明した。ここで、有権者とコネクトし、心を通い合わせた。

 そして、今回の選挙は、まったく異なる二つのビジョンのどちらかを選ぶ、国の将来にとって極めて重要な決断の機会であるという意味づけを明確にした。そのうえで、貧富の格差が広がる中で、中間層を増やすことが国を豊かにすると考える、という自らのポジショニングを明確にした。