2.問題点の指摘

「クリントン元大統領は在任中、財政赤字の削減と同時に職業訓練や教育、研究開発、医療、退職者支援に予算をかけられるよう、最富裕層に負担増を求めた。その結果、2期目が終わるころには多くの新規雇用を創出し、貧困率を低下させ、財政は史上最大の黒字に転じた。しかし、その後、まったく逆の政策がとられ、現在の苦境を招いた。ロムニー候補が示すのはそれと同じ道だ。ロムニー候補は、変革の旗手を名乗り、富裕層の減税や国防費の増加、大銀行や保険会社の権限強化を求めているが、それは、私たちが必要としている変革ではない」

 次に、最富裕層に負担を求め、中間層を増やすという自らのビジョンと、その正反対のことを目指すロムニー候補のビジョンの違いを明確にしたうえで、共和党政権の政策が現在の苦境を招いたという問題点を指摘した。

3.解決策の提示

「真の変革が何かを私たちは知っている。変革とは、どんな年代の人でも、良質な職に就くための技能と教育を得られる国にすることだ。変革とは、米国を次世代の製造業と技術革新の本拠地にすることだ。変革とは、戦争の10年間を終わらせ、自国の国づくりに取り組むことだ。変革とは、支出を削れるところで削り、財政赤字を削減することだ」

 そしてオバマ大統領は、自らが考える真の変革が意味することを明確に述べ、解決策を示した。ここでは、「変革とは…」、「変革とは…」、「変革とは…」というように、同じ表現の仕方を繰り返すことで政策の主張点を印象づけた。

 上記の要約では割愛しているが、オバマ大統領は、それぞれの主張を述べた後に、その政策によって、どんなことに困っている、どんな人たちが、どんな恩恵を得るかについて、ありありと描写するストーリーの技法を用いることで、有権者に共感を抱かせている。