今、世の中で注目を集め始めている「FIRE」。投資の収益で生活費を賄い、早い段階でフルタイムの仕事からリタイアする。「経済的自立」を果たして、本当に自分のやりたいように時間を使う。そんな夢のようなライフスタイルはどうしたら実現できるのか。今回は9万部のベストセラーとなっている『FIRE 最強の早期リタイア術』の翻訳家で、自らも「FIRE」を目指して理想的なライフスタイルを模索している岩本正明さんに「FIREを実現するための要点」を聞いた。一足飛びに「FIRE」(経済的自立&早期リタイア)を実現することが難しい人に、より現実的な「サイドFIRE」も解説!!(取材・構成/イイダテツヤ)

なんだかFIREできそうな気が…!<br />マネする人続出!話題の“早期リタイア術”の要点はコレ!Photo: Adobe Stock

――経済的自立と早期リタイアを実現する「FIRE」を目指す人にとって「まず、ここは絶対押さえておくべき!」という基本はどういったところになりますか。

岩本 「FIRE」の基本として外せないのは「4%ルール」ですね。『FIRE 最強の早期リタイア術』で詳しく解説していますが、簡単に言えば、投資資産からの取り崩し分を4%以内に抑えれば、元本が30年以上持続する可能性が95%あるというものです。

 わかりやすく具体的な数字で言うと、投資元本が1億円の場合、その4%は400万円。つまり、年間の支出が400万円以下であれば、元本の1億円は30年以上持ちこたえる。その確率は95%ですよ、というルールです。

 これは「FIRE」を目指す人にとって基本となる数値であり、考え方です。

――そもそも「FIRE」はお金を増やして、大金持ちになろうという発想ではなく、あくまでも「経済的自立を果たして、早期にリタイアする」が目的ですから、「どれくらいの資産があれば、投資のリターンだけで生活できる」という目安は重要ですね。

岩本 その通りです。「4%ルール」に則ると、年間の支出を25倍にすることで必要な投資元本が算出されますから、年間400万円なら1億円、200万円なら5000万円という計算です。

――これは非常に大事な数字ですが、1億円、5000万円と聞いてしまうと「やっぱり自分にはできないな…」と感じる人も多いと思います。

岩本 たしかに、そう感じる人は多いでしょうね。でも、ここで考えて欲しいのは完全なリタイアをいきなり目指すのではなく、副業的に少し稼ぎながら、生活費の何%かを投資のリターンで賄うという方法です。そういう発想のほうがより現実的だと思うんです。こういったやり方を『FIRE 最強の早期リタイア術』のなかでは「サイドFIRE」と呼んでいます。

――「サイドFIRE」とはおもしろいですね。

岩本 事実、私自身が投資収益を生活費の一部にしながら、翻訳の仕事を続けています。多くの人にとって「サイドFIRE」は非常に現実的な選択肢になるとは思います。

 フルタイムの仕事をリタイアしても、副業的な仕事を続けていけば、必要な投資元本を減らすことができます。実際、こうした「サイドFIRE」をする人は日本でもかなり増えていると感じます。フルタイムの雇われ仕事はリタイアしていますから、ある程度自由な時間は確保しつつ、自分の趣味やスキルを生かした副業からの収入で、投資収益では足りない部分を補う。「サイドFIRE」から入っていくのは「FIRE」を実現する近道でもありますね。

なんだかFIREできそうな気が…!<br />マネする人続出!話題の“早期リタイア術”の要点はコレ!岩本正明(いわもと・まさあき)1979年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、時事通信社に入社。経済部を経て、ニューヨーク州立大学大学院で経済学修士号を取得。通信社ブルームバーグに転じた後、独立。訳書に、『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』(ダイヤモンド社)『貿易戦争の政治経済学』(白水社)などがある。

――たしかに、とても現実的なアプローチだと感じます。

岩本 フルタイムの雇われ仕事を辞めて「自分で仕事をする」場合でも、いきなり年収のすべてを稼ぐとなると、それだけ自由度も減ってしまいますよね。時間的にも自由ではなくなるし、嫌な仕事をやらなければならない場面も増えてきます。

 でも、その半分でも、三分の一でも投資収益があれば、それだけ自由度は高まります。そういう意味でも「サイドFIRE」は非常におすすめの方法です。

 これから「サイドFIRE」を目指そうという人は、フルタイムの仕事をしているときから「リタイア後に続ける副業」を始めておくのがいいでしょうね。

――今の段階から「副業を始めつつ、FIREを目指した投資も始めておく」。どんな人にとっても現実的な選択肢ですし、非常に現代的なスタイルですね。

岩本 本当にそうだと思います。