「経済的自立」を果たして「早期リタイア」を実現する。そんな「FIRE」という生き方が今、注目を集めている。投資の収益で生活費を賄い、働かなくても、自由に生きていける。そういった「早期リタイア」までのプロセスを語った『FIRE 最強の早期リタイア術』がひときわ話題だ。「経済的自立&早期リタイア」と聞くだけで、「自分には無理」「収入が多い人しかできないでしょ!」と思っている人も多い。しかし、最初はそう思っていた人ほど『FIRE 最強の早期リタイア術』を読み、自分の人生を見直すきっかけとしている。なぜ、この本が「自分はFIREから遠い」と感じている人にそれほど支持されるのか。本書の魅力や特徴について、翻訳者の岩本正明さんに詳しく聞いた。(取材・構成/イイダテツヤ)
――最近、よく耳にするようになってきた「FIRE」ですが、関連本のなかでも『FIRE 最強の早期リタイア術』がもっとも支持されている理由について、どう感じていますか。
岩本正明(以下、岩本) そもそも「FIRE」は投資収益で生活費を賄う生活を目指していくので、それだけ聞くと、富裕層の話だったり、金融に関する専門的な知識や能力を持っている一部の人の話という印象があると思うんです。
――たしかにそうですね。
岩本 でも、この本の著者は「FIRE」を実現するための投資の知識もなければ、収入を増やすような能力、才能もない、ごく普通の人だったんです。そんな普通の人が「FIREを実現するためにどうすればいいか」が書いてある。こうした「普通の人にとって再現性が高い」という点が、この本が圧倒的に支持されている理由だと思います。
――この著者は大金持ちでもないし、「FIRE」を実現した後もぜいたくな暮らしをするわけでもなく、「年間400万円で生活する」というルールでやっていますね。そういうところも「普通の人」というイメージですね。
岩本 本当にそうですよね。ですので「FIREを目指したいけど、きっと自分には無理だろうな」「自分とは違う世界の人の話だろう」と思っている人ほど、ぜひ読んでみて欲しいです。
今すぐ「FIRE」が実現しなかったとしても、必ず「FIREに近づいていける方法」が書かれていますから。
――著者自身がものすごく倹約家というか、「絶対、損したくない」というマインドの持ち主というのもおもしろいですよね。
岩本 それは言えると思います。よく「アメリカ人の半分は株に投資しているが、日本人は1割しかしていない」という言われ方をするんですが、これは国民性を色濃く表していて、それだけ日本人は投資に対して疑り深いというか、慎重な人が多い。
そういう点でも、この著者は日本人のメンタリティに近いものがありますね。ひたすら慎重で「95%の確率で問題ない」というロジックに関しても「もし自分が残りの5%になったら」を考えるタイプですから。そういう部分も、この本が売れている理由かもしません。