アメリカ、ヨーロッパ、そして日本や中国でも急速に広がっている人生戦略“FIRE”(Financial Independence Retire Early)。「経済的自立」と「早期リタイア」を実現することで、仕事に追われることなく自分の時間を自由に使っていくライフスタイルだ。ひと昔前の「早期リタイア」とは決定的に違う新しいスタイルに、感度の高い若い層からの注目度は高まっている。そんな新スタイルを実現する指南書として『FIRE 最強の早期リタイア術』が9万部超の大ヒット爆進中。そもそも「FIRE」の本質とは何なのか。なぜ、これほどまでに世界的なブームになっているのか。そんな「FIRE」の実態について『FIRE 最強のリタイア術』の翻訳者・岩本正明さんに話を聞いた。(取材・構成/イイダテツヤ)
――最近、とても話題になっている「FIRE」ですが、そもそも「FIRE」とは何かというところからお聞かせいただけますか。
岩本正明(以下、岩本) 「経済的自立」と「早期リタイア」を意味する「Financial Independence Retire Early」の頭文字をとったものです。
投資収益だけで生活費を賄える資産を築いて、30代や40代など割合早い時期にフルタイムの雇われ仕事からリタイアすることを目指す。そんな生き方が「FIRE」と呼ばれています。
――「FIRE」は今、世界的にも広がり始めているんですか?
岩本 2010年代、金融危機後のアメリカで広がり始めて、そこから英語圏、ヨーロッパ、日本、中国へと飛び火して、世界的な広がりを見せています。なかでも若い世代に人気ですね。
――「早期リタイア」と聞くと、どうしても50代くらいの人が大金を稼いで悠々自適な生活を送るイメージがあるのですが、「FIRE」はむしろ30代、40代の若い世代にウケているのですか?
岩本 それはひとつの特徴だと思います。「経済的自立」「早期リタイア」と言うと、たしかに大金を稼いでぜいたくな暮らしをするイメージを抱く人もいるかもしれません。
でも、そもそも「FIRE」の始まりは支出の最適化。好きなことにお金を使っても、無駄なお金は使わない。そこから始めるものなんです。
それともう一つが「人生、仕事だけじゃない」。本当に充実した人生を送るためには、仕事一辺倒ではなく、もっと家族とか、地域社会とか、心から自分のやりたいことに時間を使う。
そういう生き方を実現するのが「FIRE」なので、必ずしも「ぜいたくな暮らしをしよう」というものではありません。