欧州委員会が2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する。電気自動車シフトによって独フォルクスワーゲン(VW)は世界への影響力を強めたい意向だ。一方、トヨタ自動車は商用車連合にスズキとダイハツ工業を加え、物流を含めたモビリティー技術の革新を狙う。VWと比較した場合、長期視点で、多様な移動の選択肢を社会に提供しようとしている。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
欧州委員会が2035年に
ガソリン車の販売を事実上禁止
世界の自動車産業は電気自動車(EV)シフトなど大きな環境変化が加速し始めた。特に、欧州委員会が2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する案を打ち出した意味は大きい。EVシフトによって世界市場への影響力を強めたいドイツ、特にフォルクスワーゲン(VW)の戦略が重要性を増している。主要国経済にとって自動車は雇用などを支える裾野の広い産業だ。EVシフトは、世界経済全体でのゲームチェンジが加速度的に進むことにつながる。
その状況下、わが国ではトヨタ自動車を中心とする商用車連合にスズキとダイハツ工業が参加する。その狙いは、物流を含めたモビリティー技術の革新だ。突き詰めていえば、トヨタが目指すのは自動車を用いた新しい「生き方=文化」の創出だろう。
今後の展開として、すり合わせ技術を磨き、裾野の広い産業構造を支えてきたわが国自動車産業にとって、EVシフトの影響は大きい。それだけに、本邦自動車産業がよりオープンな姿勢で自動運転などの先端技術を実用化し、人々がより暮らしやすい自動車社会を目指すことが重要だ。