そしてもう一つ。このやり取りを、その後の対応に備えて録音や録画をしておくことも必要かつ有効です。

 突然発生するトラブルやクレーマーに対して、焦らずこのような手順を踏んで対応すれば、乗り越えることができます。

◆具体的な手順
(1)まずは静かにするように「お願い」する
  →「他の人の迷惑になるので、静かにしてください」
(2)静かにしない場合は再度「注意」する
  →「先ほどもお願いしましたが、静かにしてください」
(3)注意に応じない場合は「警告」して退去を促す
  →「これ以上騒がれると業務に支障が生じます」
(4)「警察を呼ぶ」ことを告げる
  →「これ以上騒いで退去しない場合は、警察を呼びます」
  →「業務妨害に当たると判断して、警察を呼びます」
(5)従わないようであれば、実際に警察に通報する。

グレーゾーンでの見極めと対応方法

 前回、「ホワイト、ブラック……『もともとは善良』なグレークレーマーが最も厄介な理由」にも書いた通り、キレて激高した市民や消費者(グレーなクレーマー)は、反社会的なモンスター(ブラックなクレーマー)と違い、拳の下ろし方(引き際)を知りません。

「私は客(市民)だ!(税)金を払っているのよ!」「そんな対応じゃ納得できません!」などと、市民ファースト(顧客満足)を逆手にとって一歩も引かない構えの相手にどう対応するか……。こうしたグレーゾーンの見極めと対応はいつも困難です。特にコロナ禍の今は見えない恐怖と不安感で、心が折れそうになってしまいます。

 クレーム対応が人を疲弊させ、メンタルヘルスに影響を及ぼすのは、絶対的な満足も納得もない中で、顧客満足を念頭に入れながら解決する難しさやプレッシャーによるところが大きいのです。

 クレーマーと化したモンスター市民・消費者に真正面から決着を図ろうと(勝負)するのは、リスクが大きくなります。撃退してもメリットはない(気持ちとしてスカッとしない)上に、逆に恨みを買い、さらなる悪循環を招く恐れもあります。100点満点の対応を考える必要はありません。精神的なバリアーを張り、心が折れないように防御してください。モンスターに対して、完璧な対応はないのであり、被害者にならない工夫、護身(心)術が必要となるのです。

(エンンゴシステム代表取締役 援川 聡)