国民の心は「ガラスのハート」
ネットでの暴言を冷静に批判する意見も

 中国の東京オリンピック代表団の代表は、先日、中国のマスコミの取材の場でこう意思表明した。

「われわれがオリンピックに参加する目的は、良い成績を取るだけではなく、各国のオリンピック委員会や選手の皆さんに友好のメッセージを伝えるためだ。だから、いかなるネット暴力にも断固として反対する」

 中国国内でも、先述のさまざまなネット暴言の由来を分析し、冷静に解説する記事がSNSで拡散されており、多くの人がこれに賛同している。

「『審判が公平性に欠けている!』と不平不満を爆発させている人たちは、公平性に対しての意識が高いわりに、ルールに関する認識が低い。まず、体操の点数を付ける国際規則を調べるべきだ。批判はその後だ」

「国威を発揚するのは、決して金メダルの数ではない。異文化を理解し、違う意見に耳を傾ける度胸があるかどうかだ。わが国は経済的に飛躍的な発展を遂げているが、国民の心はまだ『ガラスのハート(中国語:玻璃心)』だ。人を攻撃することは、自信のなさの表れではないだろうか」

「われわれは、金メダルばかり追求するのではなくて、もっとスポーツの神髄を学ぶべきだ。オリンピックや世界大会のときだけに熱狂するが、日常的にスポーツに無関心ではないか。本来なら、『全民健身』(全国民がスポーツに打ち込み、健康な体を持つこと)がもっとも大事だ」などの指摘があった。

 今、中国にとって、北京冬季オリンピックの開催と成功は至上命令である。先日、北京を中心に競技会場となる河北省や天津の人民代表大会は、競技会場のある地元政府に立法権を委任した。これは中国ではあまりないことである。北京冬季オリンピック期間中、地元政府が環境保護や公共安全、道路交通などで必要であれば、各地域の判断で臨時の行政措置を講じられるようにするという。迅速な対応を可能にする狙いがある。こうした動きからも、中国の「北京五輪は何が何でも成功させる」という意志が見て取れる。

 8月8日、東京オリンピックの閉会式が行われる。大会期間中、1日当たりの日本国内の新型コロナウイルス新規感染者数は過去最高を更新した。2週間後には東京パラリンピックの開幕が予定されるが、感染拡大が収束するめどはたっていない。1日も早く、コロナが鎮火することを願うばかりである。