シニアにとってのシニアシフトの意義とは?
次に、商品の買い手であるシニアにとっての意義は、より価値の高い商品・利便性の高いサービスを得られるようになることだ。このわかりやすい例は、大手スーパーにおけるシニアシフトの動きである。
従来、イオンやイトーヨーカドー、ダイエーなど大手スーパーは、品揃えの豊富さを売りにするために、売り場の広い大型店舗で事業展開してきた。品揃えの豊富さと規模の経済を追求するために、店舗規模を徐々に大型化し、土地コストを下げるために徐々に郊外のロードサイドに出店するようになった。
ところが、こうした郊外の大規模店舗は、シニアにとっては行きづらい場所になる。高齢になるにつれてクルマの運転をしなくなり、足腰の衰えに伴って自宅からの行動範囲が狭くなるからだ。
また、店舗が広いと欲しい商品を探すのにいちいち長い距離を歩く必要があり、疲れる。すると、店舗の広い大型スーパーに買い物に行くのがおっくうになる。高齢化の進展とともに大型スーパーからシニア客が徐々に遠ざかっていったのだ。
こうした状況に陥った反省を踏まえ、スーパー各社では2011年あたりからようやくシニアシフトに本腰を入れるようになった。シニア客に好まれる売り場、商品、サービス開発などにおいてさまざまな取り組みがなされるようになった。
これらの取り組みの結果、店舗では車椅子でも十分通れる広い通路、歩行に難のある人でも乗りやすくした速度の遅いエスカレーターの導入、途中で休憩できる椅子の設置が進んだ。また、文字が大きく見やすい価格表示、欲しい商品が探しやすく、取りやすい棚の導入なども進んだ。
こうした取り組みが今後ますます増え、競合他社との切磋琢磨を通じて商品・サービスの質が上がれば、シニア消費者にとっての利便性はどんどん高くなっていくだろう。