2007年と明らかに異なるシニアシフトの特徴

 なぜ、いま、さまざまな産業で「企業活動のシニアシフト」が起きているのか。実は、2012年は、団塊世代の最年長者である1947年生まれが65歳、つまり定年に達する年なのだ。

  人数の多い団塊世代が徐々に定年を迎え、今度こそ大量の離職者を対象とした新たな事業機会が生まれるとの期待感から一種のブームになっている。このことが理由の1つであるのは確かだ。しかし、これだけがいま起こっている産業界全体のシニアシフトの大きな流れの理由ではない。

  実は、5年前の2007年にも「2007年問題」と呼ばれ、似たようなブームが起きた。ところが、今回の動きは5年前の一過性のブームとは大きく様相が異なっている。それは、①企業におけるシニアビジネスへの取り組みが本気になってきたこと、②取り組む企業の業界が多岐にわたっていることだ。

  つまり今回の動きは、単なる団塊世代退職市場ブームという次元ではない。今後、長期にわたって継続的に起こる社会構造の変化への対応としての取り組みが目立つ。この意味において、2012年は「シニアシフト元年」とも呼ぶべき区切りの年と言えよう。

  実際に私は、多くの企業経営者・実務担当者とのビジネス現場でのやりとりを通じて、このことを肌身で実感している。

企業にとってのシニアシフトの意義とは?

 こうしたシニアシフトには、商品の売り手である企業、商品の買い手であるシニアの双方にとって、どのような意義があるのだろうか。

  まず、企業にとっての意義は、先細る若年層ではなく、今後も増え続けるシニア層を自社のコア顧客にすることで、持続的な売上げ増・収益化が可能になることだ。これをいち早く実行している業界の例として、コンビニ業界が挙げられる。

  従来、コンビニは「近くて便利だが、値段が高い」というイメージが強く、主な顧客層は長い間若い男性で、シニアや女性は少数派だった。

  ところが、ここ数年シニアや女性の来店者の割合が増えている。国内コンビニ最大手セブン‐イレブン・ジャパンの来店客(1日1店舗当たり平均客数)の年齢別構成比の年次変化を見るとそれがよくわかる。

  1989年度には30歳未満が63%、50歳以上が9%だったのが、2011年度には30歳未満が33%、50歳以上が30%となっている。30歳未満の割合がほぼ半分になったのと対照的に、50歳以上の割合が3倍以上に増えている。

  こうした「企業活動のシニアシフト」にいち早く取り組んだ結果、セブン‐イレブンも、ローソンも近年は毎年最高益を更新し続けている。