前回『団塊世代のシニア層入りで、「賢い年配の消費者」が急増!』、「賢い年配の消費者=スマートシニア」が、これからはもっと増えていくであろう、とお話ししました。

 しかし一方で、「スマートシニアという考え方は確かに素晴らしいが、そのような知的で格好よく老後を生きるシニアはほとんどいないのではないか。多くのシニアは、年を取るとともに、体力も知力も気力も衰えていくのではないか」という人も少なくありません。実は、このような声は、6年前に私がスマートシニアという言葉を提唱したときから存在するものです。

年を重ねることで
思考力や判断力が発達する人も

 このような声の背景には、「年を取ることは衰えること」という固定観念が強いことがあります。一般には、年を取るに伴い、体の機能の衰えを感じることが多いのは事実です。しかし、だからといって、思考力や判断力、洞察力などの知的な能力までも衰えていくとは限らないのです。実際、年を取るにつれて、むしろこうした能力が発達していく人も多く存在しています。

 このような「年を取ることは衰えること」といった固定観念にとらわれないために、人が年を取ること、つまり「エイジング(aging)」という概念について正しく理解することが有用と思われるので、ここで改めて整理しておきます。

 エイジングは、日本語では「高齢化」と訳されることが多いのですが、本来の意味は、人が齢を加えること(加齢)、齢を加えた人が社会に多くなること(社会の高齢化)、そして、これらにより性質が変化すること(経年変化)をいいます。

 こういうさまざまな意味を持つ言葉を「高齢化」という1つの言葉でのみ表現することで、本来の含蓄が矮小化されてしまうことが、残念ながらしばしば見られます。

 エイジングという言葉は、これまでどちらかというと「マイナス」の側面が強調されてきました。 たとえば、石油化学プラントや発電プラントは、長年稼動すると、回転部が摩耗し、配管などの部材の材質が変化して脆くなります。このような経年劣化は、設備のエイジングです。これは、しばしば事故の原因となるため、可能な限り避けたいマイナスの対象とされてきました。

 しかし、そもそもエイジングには「プラス」の側面があるのです。