相手に断らずに録画・録音するのは「盗聴」ではない

 また、質問しても自分の氏名すら名乗らないようなケース、まったく話が通じないような相手に出くわすケースもありますが、こうした困ったクレーマーに対して、事前に許可を求めずに録画・録音をしても、罪に問われることはありません。

「隠し撮りや盗聴に当たるのでは?」と心配になる方も多いと思いますが、そもそも、隠し撮りとは何でしょうか。隠し撮りとは、撮影を禁じられているものを写真や動画に撮ることや、女性のスカートの中を何食わぬ顔で撮影する痴漢行為など、被写体や対象物の持ち主や管理者の許可なく撮影することを指します。また、盗聴は会話の当事者の双方に無断で、他人の会話をひそかに聞いたり録音したりすることを指します。クレームに対応している側が録音することは盗聴には当たりません。会話の当事者が相手に断らずに録音することは「秘密録音(無断録音、無許可録音)」といい、これは過去の判例で違法ではないとされています。

 クレーム対応に当たるとき、録音していることを告げずに録音すれば「隠し録り」になるのかといえば、そうではありません。大声を上げるクレーマーに対して「録音する」と告げれば、トラブルが拡大することは明らかです。不必要な説明で相手を興奮させると暴力沙汰の被害者になりかねません。こうしたことから、トラブルに際してやりとりを録音することは証拠を得るための正当防衛に当たり、相手に録音する旨を告げなくても法律には抵触しません。しっかりと対応するために相手の言い分を記録するのは重要なことなのです。

 とはいえ、相手に録音していることを知らせることができるなら、そのほうがベターです。できるだけ、先に説明したように「大切なことなので記録させていただきます」とまず相手に告げてから録音するようにしてください。