WebベースOSの光と影

 WebベースOSの圧倒的な強みは、先にも触れたように、ユーザーや管理者の手を煩わせずにアップデートや機能追加ができ、情報セキュリティーの面からも有利という点にある。また、処理の大半がクラウド側で行われるため、端末側のハードウエア要件が低くて済み、コストダウンしやすいことも挙げられる。

 反対にデメリットとしては、高速で安定した通信インフラが整っていないと使えない、あるいは使えたとしてもユーザー体験が著しく劣ってしまうということがある。現時点でWindows 365が企業ユーザーのみを対象とし、Chromebookが一般消費者よりも教育市場に力を入れているのも、それらの環境ではネットワークインフラが整っていると考えられるためだ。

 加えて、WebベースOSはパブリッククラウドを利用するため、もし企業ユーザーが独自サーバーでオンプレミスのシステムを構築している場合には、両者の併用や融合が難しくなる。そして、万が一、クラウドPC側に障害が発生すると、接続しているクライアントデバイス全体がダウンして利用できなくなる可能性もある。

想定されるアップルの対応策とは?

 現状では確かにデメリットが無視できないWebベースOSだが、高速で安定したネットワーク環境の整備は確実に行われていき、SaaSの流れも加速していくとすれば、いずれは個人ユーザー向けにも主流化することは間違いないだろう。そして、もしアップルが対応するとなれば、Windows 365式ではなくChromebook式、つまり専用ハードウエアとWebベースOSの組み合わせとなるはずだ。

 なぜなら、アップルにとってはハードウエア製品の売り上げも無視できないだけでなく、優れたユーザー体験を作り出すためにはハードウエアとソフトウエアの融合が不可欠と考えているためである。現状、OSのサイズが肥大化する中、インストールやアップデートに伴う煩雑さがユーザーや管理者の負担となっていることは明らかで、これを解決するためにもWebベースOSへの移行はアップルにとっても不可避といえる。