みんなが一緒に、よりよい未来を描いていくこと
池原さんの事業の数字では、女性活躍のために社外メンターを導入した企業は今年に入ってから約3倍に増え、その目的も「CSRの一環として」という視点から「経営戦略として」という視点に移り変わりつつあるという。その背景には何があるのだろうか?
池原 これからの企業には“一人ひとりの違い”に向き合う土壌が求められます。先ほどお伝えしたように、機関投資家の目がダイバーシティに向くようになりました。そうした状況を把握した企業が「本気を出してきた」という印象を受けています。イノベーションというものは、多様な人たちの価値観が融合したときに生まれるものです。
さらに言えば、あらゆる職種において顧客は多様ですよね。企業側に男性の目線しかなければ、顧客のニーズをつかんだイノベーションは起こせません。その点、社外メンターは、会社横断・チーム横断・部署横断という“ナナメの関係”からアドバイスする存在です。その結果として、多様な知見が入り、メンティの視野が広がるのです。
「違う目線を入れる」ということは、ダイバーシティの真髄です。そこに気づき始めた企業が増えているのだと思います。
大学時代の研究テーマに「多文化共生」を選び、それ以来、ダイバーシティ社会の実現を自らのビジョンとしてきた池原さんが理想とするのは、誰もが一人ひとりの違いを“当たり前のこと”として受け入れながら、共に楽しく働いていける環境だ。
池原 “女性活躍”というテーマが話題にならないくらい、女性の活躍が当たり前になっている欧米の国も多いと思います。いまの日本は過渡期なのでしょう。仕事とプライベートをトレードオフにせず、どんな事情があってもその人にとって最大限のパフォーマンスを発揮できるような社会をみんなでつくっていきたいですね。
男女どちらが悪い、どちらが我慢すべき、という議論ではなく、「みんな一緒に、よりよい未来を描いていこうよ」というスタンスで、この過渡期を乗り越えていきたいと思っています。