全方向で「正しいことをする」ビジョンがいちばん大切
さまざまな人がそれぞれの人生観・就労観で個々の生活スタイルを持ち、働き方を考えていくダイバーシティ社会――伊藤さんが考える、その理想形とは?
伊藤 その人の属性ではなく、能力で評価される社会が理想だと思います。「履歴書」の不要な社会です。「何歳か? 女性か男性か? どこに住んでいるのか? 最終学歴は?」と、私自身も現在では誰かを採用するときには履歴書を必ず見ますが……そこに書かれている情報はほとんどが「属性」的なものです。現在は履歴書のない面接は困難ですけど、その人が、いま何ができて、何ができないのか、そして何がやりたいのかが重要。どういうことが得意でどういうことが不得意なのか――それを見極めることが採用の本質です。属性にとらわれる必要はあまりありません。
コロナ禍で渡航が規制されている現在、在留外国人にとって、日本で働くこと・働き続けることは自分自身の生活のためとはいえ、迷い・ためらいのある大きな問題だ。伊藤さんは、取材の最後にこうメッセージを残した。
伊藤 「正しいことをする」を、私たちは一つのビジョンにしています。派遣スタッフに対しても、企業さまに対しても、「正しいことをする」。その姿勢で、弊社は安心して働ける職場の提供を心がけています。もし、外国人の方が働くことに迷っているのであれば、一度お電話をいただき、仕事の話以外でも構わないのでコミュニケーションをとりたいですね。「日本の職場で働くことが怖い」と思っている外国人の方もいるでしょうが、一歩踏み出してほしい。それから、日本でせっかく働いている外国人が、「日本は働きづらい」というネガティブな話を広めてしまうことは避けたいですね。そのためには、日本人と外国人がお互いに歩み寄っていくことが重要。GCCのメンバーも、「Why Japanese people?」みたいなことを言いますが、「ここは日本だから日本のルールやマナー、慣習を理解する必要がある」と私は説明します。お互いにアジャストしていかないと、いつまでたっても分かり合えません。みんなが時間をきっちり守り、自分の仕事をしっかり行う方法で日本の優れた製品が生まれていくわけで、外国の方は学ぶことも多いでしょう。一方、私たち日本人は、彼ら彼女たちの発想やコミュニケーションに対してのストレスを理解しなければいけません。外国人は「Why Japanese people?」、日本人は「これだから、外国人は…」と愚痴を言い続けても何の解決にもなりません。
※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。