スリランカ、コロナ禍「アジアで初」の利上げに着手した2つの理由Photo:PIXTA

デルタ株による新型コロナウイルスの感染再拡大が続く中、スリランカ中央銀行は利上げに踏み切った。通貨ルピー安を背景とした輸入物価上昇によるインフレ懸念や資金流出がその原因である。外貨準備も十分でなく経済の先行きに不透明感が強い。(第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト 西濱 徹)

アジア新興国の中で最初に
金融引き締めに転じる

 スリランカ中央銀行は、8月18日に開催した金融政策委員会において、政策金利であるスタンディング・デポジット・ファシリティ金利とスタンディング・レンディング・ファシリティ金利をそれぞれ50bp(ベーシスポイント=0.01%)引き上げるとともに、9月1日付で法定預金準備率を200bp引き上げるなど金融引き締めにかじを切った。

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミック(世界的大流行)を受けて全世界的に金融緩和が行われてきたが、中銀はアジア新興国の中銀の間で最初に金融引き締めに転じる格好となった。

 なお、中銀は新型コロナ禍による景気減速懸念の高まりを受け、昨年7月に政策金利を100bp引き下げる金融緩和に動き、その後も景気下支えを目指して特定セクターを対象に借入金利に上限を設けるなど政策支援を強化させてきたが、1年ほどで政策の見直しに動いた格好である。