東京証券取引所の山道裕己代表取締役社長がダイヤモンド編集部のインタビューに応じた。山道社長は、今回の市場再編後について「企業価値をより向上してもらえるような基準を設けるかもしれない」と述べ、上場基準のさらなる厳格化の可能性を明かした。特集『東証再編 664社に迫る大淘汰』(全25回)の#18は、そのインタビュー全文をお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)
30兆円規模のトヨタから数十億円の企業が混在
東証1部「コンセプトがあいまいになっている」
――来年4月の市場再編を前に上場企業にさまざまな動きが出始めていますが、東証が企業側に期待することは何でしょう。
今回の市場区分見直しの目的は、企業価値向上に向けて上場企業に持続的な取り組みをしていただきたいということ。それぞれの企業が魅力を増していただくことで、マーケット全体が魅力的になっていかなければならない。
2013年に東京証券取引所と大阪証券取引所(現大阪取引所)が経営統合し、日本取引所グループをつくった際、現物市場は東証に、デリバティブ市場は大証にまとめましたが、今の東証の市場区分は当時のままです。市場のコンセプトが非常にあいまいになっている。
東証に上場している全企業は3700社強ですが、1部だけで2200社弱あるわけです。この中にはトヨタ自動車みたいにものすごく大きい企業から、数十億円の企業までが混在し、規模にしても特性にしても、どういうマーケットか非常に分かりにくくなっている。2部、マザーズ、JASDAQも同様で、企業価値を向上させる上場企業のインセンティブになっていないのではないかという反省があった。
従って金融審議会などでも議論していただき、より明確なコンセプトに基づいた市場区分にしていこうと。プライムは海外企業から見ても、事業規模なり流動性なりが十分魅力的で、しかも一段高いガバナンスを持つ企業の市場になる。スタンダードは十分な規模とガバナンスを持つ企業、グロースは高成長が見込まれるベンチャー(の市場)という区分に見直すわけです。
――海外投資家に魅力的な市場にするのであれば、例えば「流通株式時価総額100億円」の基準をもっと上げる必要があるのではないでしょうか。