それを受けて裁判所へ逮捕状を請求、逮捕という流れになる。一方、警察の仕事は「逮捕すれば終わり」ではない。検察が起訴、公判で有罪にできる証拠を過不足なくそろえることが求められる。

 刑事訴訟法の手続きだが、逮捕から48時間以内に送検しなければならない。それを受けた検察の請求で10日間の勾留が決定、さらに延長請求が認められればもう10日間の勾留が可能になる。その満期までに起訴するかどうかが判断される。

 その間、司法解剖で死因や凶器の特定、動機や殺意など殺害に至った背景なども詰め切って、初めて殺人容疑で逮捕状を請求、再逮捕となる。ここで重要になるのは、明確な「殺意の立証」だ。

 よくネットの投稿などでは交通事故などの過失も、殴ってたまたま打ち所が悪く偶発的に死亡させてしまったケースも「どれも殺人だろう」という意見も見られるが、これは少し乱暴と言わざるを得ない。

 殺人罪の立証には明確な殺意、もしくは「相手が死ぬだろう、死ぬかもしれない」という未必の故意の立証が必要なのだ。

 昭和の刑事ドラマといえばバイオレンスアクションで実態とかけ離れた内容だったが、最近は「法に基づき証拠を積み重ね、事件の真相を解き明かす」という現実に近いドラマも散見される。

 もちろん容疑者夫婦には推定無罪の原則があり、犯人と決まったわけではない。しかし、警察の法に基づいた徹底的な捜査によって全容解明が果たされ、犯人がしかるべき刑事罰を受けることが、鷲野さんの無念を晴らすことにもなるはずだ。

 それでも、失われた命が戻らないのは言うまでもないが……。