合法化による経済的なメリットも重要視されている。タガログ語と英語が公用語のフィリピンは、カナダや米国など英語圏のサプライチェーン(製品の調達・流通・販売など)と強いつながりを持つため、医療用大麻を合法化すれば国内だけでなく、海外との取引による収益増加が期待できるというのである。

 また、マレーシアはアジアの中でも特に厳しい大麻禁止政策をとってきたことで有名だが、実は最近、閣僚が政策見直しを示唆する発言を行った。

 2019年6月、ズルキフリ・アフマド保健大臣(当時)が「過去40年間に及ぶ薬物戦争(厳しい薬物禁止政策)は失敗だった」と認め、「薬物の非犯罪化と、医療用大麻の合法化が必要となるだろう」と述べたのである。

 マレーシアは2018年にがん患者など数百人に大麻オイルと乾燥大麻を販売した男性に死刑判決が下され、当時のマハティール・モハマド首相が判決の撤回を求めるなど大きな論争を巻き起こした。

 皮肉なことにこれをきっかけに大麻犯罪に対する死刑判決の廃止と危険薬物法(DDA)の改正による医療用大麻の合法化を求める声が一気に高まった。その結果、政府関係者や国会議員、イスラム教徒活動家などが大麻解禁についての議論を積極的に行うようになったのである。

 医療用大麻の啓発活動などを行っているNPO団体「大麻に関するマレーシア意識向上協会(MASA)」のハリッシュ・クマール代表は、「医療用大麻の合法化は2~5年くらいの間に実現するだろう」と言う。

 この他、インド、スリランカ、ネパールなどでも合法化への動きが活発化している。