対面とオンライン――それぞれの短所とは?

 言語化しにくいものを伝えるこれからの技術「テレプレゼンス」の可能性はいかがですか。

伊達 テレプレゼンスとは、一言で言うと「オンラインでも一緒にいるような臨場感を与えられる」技術のことです。電話からZoomなどのWeb会議ツールへの進化が最たるものでしょうし、2000年代のオンラインコミュニケーションと現在のオンラインコミュニケーションを比較すると、「共にある感覚」は現在のほうがずっと得られるでしょう。

 テレワークの文脈なら、たとえば、「tonari(トナリ)」という全身が映せるような技術などが開発されています。VRも人材育成では使用されるようになってきました。具体的には、警備会社が火災避難の誘導訓練などで使用しています。

 現状、採用の世界ではこうしたツールはあまり使われていません。今後は面接よりも、企業見学などで使われていく可能性が高いでしょう。リアルタイムにオフィスが見られ、自分があたかもそこにいるかのような感覚を味わえれば、「この会社の雰囲気は自分に合いそうかも」といった手応えを得られるかもしれません。そうなれば、オンラインによる“非言語的手がかり”の減少による課題の打開に繋げていくことができるでしょう。

 ウィズコロナ時代の採用活動において、リアルとオンラインを使い分けていくコツを教えてください。

伊達 採用におけるリアルとオンラインの組み合わせ方について、いまのところ正解はありません。そのため、組み合わせ方自体がひとつの競争フィールドになると考えられます。組み合わせを考える際のポイントは、オンラインとリアルの特徴をきちんと把握するということです。これまでお話しした、“非言語的手がかり”の大小などの特性を押さえる必要があります。

 私が特に意識してほしいと考えているのが、対面の短所についてです。コロナ禍となり、オンラインのネガティブな側面はさまざまなかたちで議論されています。しかし、対面のデメリットを考えることは少なかったでしょう。いままで慣れ親しんで、あまりにも当たり前になっていたために、暗黙のうちに「対面はよいものだ」と思い込んでいたからです。対面の短所はいくつかありますが、大きなひとつはバイアスです。“非言語的手がかり”が多い対面は、バイアスを生み出しやすいのです。そのため、客観的に能力を見極めるには、むしろ対面でないほうがいい。

 せっかく新しいオンラインという手法が登場しているので、「これまでのアプローチで見極められなかったことは何なのか?」を議論する機会にできるとよいと思います。その議論を踏まえると、能力をきちんと見極めないといけない場面においては、「オンラインにしよう」という判断がなされるようになるかもしれません。対面ではなく別の方法を組み込むことで、採用をより効果的な活動にしていけるはずです。

 もちろん、オンラインにも短所はあり、その最たるものが企業への「惹きつけが苦手」ということです。こうした特性を理解しておけば、「惹きつけを重視したいタイミングなので対面にしましょう」といった手を打つことができるはずです。

 いずれにせよ、対面とオンライン双方の特徴を踏まえて自社の採用に合ったスタイルを検討していくことが重要です。

ウィズコロナの採用活動で、“リアルとオンラインを使い分ける”コツ

オンライン採用 新時代と自社にフィットした人材の求め方

伊達洋駆

株式会社日本能率協会マネジメントセンター刊
2021年2月発行
ISBN9784820728757
A5判・232ページ
本体1800円+税