パワハラ野郎になる
メリットとは

 これだけ迷惑をかけるパワハラ野郎がなぜ撲滅されないのか。本書には、その理由も記されている。実はパワハラ野郎になることにも十分な理由があり、メリットがあるのだ。

 さまざまな研究によると、私たちは、「権力者が弱い者にいばりちらすのは当然」だと思っているらしい。スタンフォード大学のララ・ディーデンズの研究によると、この社会ではへつらったり相手を切り捨てたり――怒りや非難を戦略的に用いたほうが、他人を蹴落とし、より高みにのし上がっていけるという。

 怒っている人は「好感が持てず、冷たい」印象を与えるが、かんしゃく、暴言、威圧的な視線、人を指さすような激しい手の動きなどの怒りを用いた戦略は、その人物の有能さを印象づける。

 本書では、「人を威圧するタイプ」の人間が相手をにらんだり、こき下ろしたり、嫌がらせをしたりといった卑劣な行為をすることで、権力を拡大していった有名な経営者の名が多数挙げられている(皆さんも必ず知っている名前が列挙されている)。

 よく、「本当に偉い人は消して偉そうにしない」と言われる。これは正しいと思う。しかし、社会的に偉い(ことになっている)人が偉そうにしないかというと、そんなことは絶対にない。

 本当に偉い人は偉そうにしないが、本当に偉い人はとても少ないので、偉くもないのに偉そうにしている偉い(ことになっている)人はいくらでもいる。そして、偉そうにすることで、巧みに偉い(ことになっている)人になりおおせる人もまた、いくらでもいるのである。

 つまり、パワハラ野郎は「偉い人」になる近道にもなりうるのだ。サービス業の店員などに、ことさらに横柄にふるまって、丁重なサービスを受けようとする人がいるのも同根だろう。

パワハラ野郎の撲滅法は
デリートすることでしかない

 さらに、本書では、パワハラ野郎の撲滅法として10の考え方を挙げている。