1)ルールを口に出し、書き出し、行動せよ→やってはダメなことをルール化する
2)採用にパワハラ野郎を関わらせるな→パワハラ野郎自身がパワハラ野郎を雇う傾向がある
3)パワハラ野郎はただちに排除せよ
4)真のパワハラ野郎は無能な社員として扱え→秀でた能力を持っていたとしても、他人を迫害するやからは無能扱いされるべきである
5)権力を与えると、パワハラ野郎になる場合があるから注意せよ
6)従業員同士の不必要な格差を減らせ
7)方針やシステムだけでなく、パワハラ野郎自体の「今」を管理せよ
8)建設的な衝突の模範を示せ→自分が正しいという前提で戦うとしても、自分が間違っているという前提で人の話に耳を傾けること
9)パワハラ野郎を一人採用せよ→一人だけ採用し、反面教師にすることで、周りの人間がルールや規範を守ろうとする(かもしれない)
10)大きな方針と小さな思いやりをリンクさせよ→全員に日々の仕事における仕事が何のために存在しているのかを考えてもらい、パワハラ野郎を生まない土壌をつくる
パワハラ野郎の性格や行動を変えさせるのは“無理”だと言うのである。さらにはそういう人と一緒に働けば、誰しも同じようにパワハラ野郎になりかねないとも本書は警告する。
したがって、大事なのはなんといっても採用である。何度か当人の人となりを確かめる機会を作り、パワハラ野郎を採用しないことこそが最大の防御策である(その意味では従業員が紹介する「リファラル採用」は大いに有効である)。
ただ、注意すべきなのは、パワハラ野郎でなくとも、採用の場でうまく自分を表現できない人もいれば、天才的な能力を持っているがゆえに敏感すぎて、採用の場で不穏当な態度をとってしまうことがある点だ。そういう人はパワハラ野郎を排除するためのスクリーニングでは排除されてしまう。
会社にそれらの人とうまく協調して仕事ができる組織的能力があれば(たとえば、出版社で、繊細な著者と仕事ができる編集者などはその類だ)、そうした、一見人当たりがよくないとか、対人関係の構築が苦手な人で、かつパワハラ野郎でない人を十分に活用できるし、それが競争力にもなるから、採用基準は会社によって変えるべきである。
さらに、問題が起きた際の対処が重要だ。個人としての成績が優秀だと、会社としては当人に辞めてもらうことを躊躇(ちゅうちょ)しがちだ。仏の顔も何度かは必要だが、問題が解決しないなら、やはりその組織には合わないので、別の職場に移ってもらうよう(あるいは、別の働き方をしてもらうよう)働きかける必要があるだろう。本書では、フォーチュン500にランクインしている会社のCEOが、25名のパワハラ幹部を一掃しようと決心し、査定システムを武器に2年かけて全員を排除し、業績を上げて、業界トップになった例が紹介されている。
「こうした決断はたいてい非常に難しく、白熱した議論を呼ぶが、いざ決断を下してみるとその結果は目覚ましく、みんな『どうしてもっと早くやらなかったのだろう?』と言うんです」とある。多くの人の経験とも重なるのではないだろうか。
このような事例は特定のパワハラ野郎に限ったことではなく、誰でもパワハラ野郎になりうるという点は私たちもしっかり心得ておくべきだろう。権力を持つと人は変わる。立派だと思われていた人が、いつしか傲慢(ごうまん)になっていたりする。トップがパワハラ野郎に変わったら大変だ。その意味では、トップをもデリートする力を持つ第三者的な機関があり、いざという場面ではそれを実行することが必要となる。ただ、委員会やら審議会が改善を要望する声明を出すくらいでは、何も変わらないのだ。
(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)