実際に受験する率が高い埼玉と千葉 

 昭和秀英と校地が隣接する渋谷教育学園幕張は県内トップ校であり、東京や神奈川の難関校受験生も例年ならば腕試しにやってくる定番の併願先でもあるが、20年秋の模試の段階から兆候が出ていたように、21年は志願者数を大きく減らした。

 安全志向で難関・上位校を敬遠気味という最近の学校選びの影響も受けてはいるが、それ以上に、2月1日の東京・神奈川の入試解禁日まで10日を切る時期に、万が一にも感染したら取り返しがつかないという受験生とその保護者の意識が、都県境の江戸川を渡ることを躊躇(ちゅうちょ)させたことが大きいだろう。

 3位専修大学松戸(松戸市)はJR常磐線沿線では併願先の定番で、底堅い印象がある。それは前ページの図2を見るとはっきり分かる。

 東京・神奈川に本命校がある受験生にとって、埼玉と千葉はあくまでもお試し受験である。特に、合格者を多めに出して実倍率2倍程度という埼玉は「合格体験」を得るための貴重な入試といえる。

 したがって、実際に受けることに意味がある。出願したら受験する比率は総じて高く、埼玉で8~9割、千葉でも同様である。昭和学院秀英は県内受験生の併願先としても人気だが、最初の入試が解禁初日午後というタイミングもあって、学校全体の受験率は9割を超えている。

 21年は全体的に出願自体を避けた傾向が図1からも見て取れる。その点、県内もしくは隣接エリアの受験生が併願先として選ぶ学校は実際の受験率がだいぶ下がる傾向にある。埼玉でいえば県西部の星野学園、千葉なら県北部の専修大松戸がそれに該当し、5~6割台となっている。

 22年入試では、県内の高倍率を避けるような形で、東京23区東部の下町エリアや東京メトロ東西線でのアクセスが便利な千代田区方面の学校に千葉からの受験生が増加するかもしれない。もちろん、コロナ禍次第ではあるのだが。
 
 最後に、茨城の様子についても少しだけ触れておきたい。県立の進学校が軒並み中高一貫化したこともあり、県内は中学受験ブームの様相を呈している。21年に2108人を集めた江戸川学園取手(取手市)は別格であり、常磐線やつくばエクスプレス沿いの受験生が多く受験している。

 2位は茗渓学園(つくば市)となった。同じ市内にある中高一貫校の並木中等教育学校、そして何より県下で水戸第一と覇を競う土浦第一という県立トップ校が中高一貫化した影響もあり、その併願先としても人気が急騰し、20年より225人上積みしている。

 3位は中等教育学校の土浦日本大学(土浦市)の1108人である。20年より6人増だが、茗渓学園の勢いが勝った。22年も両校の競い合いは続くことになりそうだ。