自身のスキルの社会還元を目的にするシニアも

 職場環境や定着状況など、50歳以上の派遣スタッフの就労には、数年前に比べて何らかの変化があるのだろうか。

野坂 まず、定性面の変化で言えば、「就業分野の広がり」があります。これまでは、シニアの年代に入ってから製造業での軽作業(工場や食品製造現場での作業など)が比較的多く、定年年齢の60歳あたりで引退する方もいましたが、最近は、事務職領域ではスタッフがシニアになっても変わらず事務職を続けたり、新たに事務職で職場定着する層も伸びています。

 仕事のキャリアだけではなく、生活経験のキャリアを戦力にして就労する方も増えています。たとえば、介護領域で資格を必要としない、調理補助やリネン交換の仕事に“家事のスキル”を持って就労するシニアの方々がいます。介護施設入居者と年齢が近いことで会話が弾み、若年層よりも要介護者の体の不自由さに気づきやすいといった強みもあります。

 また、ご自身のスキルの社会還元を目的にしているシニアもいます。たとえば、技術者領域で「現場に携わっていたい」「後進のために役立ちたい」という方たちです。早期退職や定年を迎えてから技術者領域で「シニア派遣」の仕事をスタートさせる方も多く、年を重ねるにつれての社会貢献意識の高まりが見受けられます。

 70代以上の派遣スタッフの伸び率は、60代の2倍ほどになっている*6 。シニアの中でも、古希(70歳)を過ぎている人の具体的な就労はどういったものか。

*6 前ページ図版「50代以上 スタッフサービスグループの就労派遣スタッフ割合の伸び率(2017年3月の就業者割合 を基準値1としたときの各年比較)」参照

野坂 製造分野の派遣スタッフであるAさん(75歳)は、週4日・1日5時間という就労で、総労働時間を月あたり90時間に収めて、スーパーマーケットの工場で総菜のパック詰めを行っています。「働くことが生きがいで、家にいるときよりも気持ちの“持ち”が違う。楽しく仕事しているほうが体も丈夫でいられる」とおっしゃっています。

 事務領域の派遣スタッフであるBさん(70歳)は、週5日・1日4時間(9時から13時)の就労。行政機関で、電話受付(コールセンターでの予約関連業務)を行っています。「体力的にも無理せず、新しいことへのチャレンジは大変だったけど楽しい」とコメントしています。

 医療・介護分野の派遣スタッフであるCさん(78歳)は、週5日・1日8時間の就労です。仕事の内容は、介護施設で、デイサービスでの介護業務(食事介助・排泄介助・入浴介助・レクリエーション・移動介助など)。「人のお世話をするのが天職だと思っている。人に尽くしたい。利用者さんとかかわらせてもらえることが幸せ。毎日がとても充実していて、明日また何かひとつでも喜んでもらえることをしたい」とおっしゃっています。