「コミュニケーション力」や「活力」があるシニアたち

「2025年問題」として知られるように、日本の人口のボリュームゾーンである団塊の世代*7 が2025年前後に後期高齢者(75歳以上)になる。現在の70代のその層がリタイアした後も、シニアの就労は増えていくに違いない。労働力人口*8 が減る見通しのなかで、政府はシニアがそれぞれのスタイルで働き続けることを奨励し、企業・団体がその受け皿になっていくからだ。

*7 厚生労働省では、1947(昭和22)年~1949(昭和24)年生まれを団塊の世代としている。今年2021年に72~74歳になる世代。
*8 15歳以上の人口のうち、「就業者」と「完全失業者」を合わせたもの(総務省統計局/労働力調査 用語の解説から) 労働力人口は近年増加傾向にあったが、2020年度は減少した。

野坂 シニアの特徴のひとつは、その社会経験や人生経験の高さから「コミュニケーション力」や「活力」を持っていることでしょう。傾向的に、シニアの派遣スタッフはエネルギッシュな方が多く、その活力が周囲に伝播しやすいです。先ほどと重複しますが、その経験値から相談役や調整役に向いている方も多いですね。

 そうしたなかで、雇用者(企業経営者、人事・採用担当者など)が気をつけるべきことが三つあります。まず一つは、労災のケアです。シニアの労災の可能性は若年層に比べて高くなるため、シニアが働きやすい就業環境を整えたり、力作業をなるべく避けたりするといった配慮が必要となります。

 次に、パソコンやスマホなどの操作サポート。パソコンやスマホに不慣れな方も多いため、業務開始直後はパソコン操作や勤怠システムの使用方法などのレクチャーをしっかり行い、何かあればすぐにフォローできる体制を整えることが肝心です。

 三つめは、本人のスキルや得意・不得意を見極めた業務アサインを行うこと。シニアは高い専門性やスキルを有していたり、加齢による経験値が豊富ですから、これまでのキャリアが生きる仕事をアサインすることで、組織の活性化に繋がりやすいです。

 実際、当社の技術者・ITエンジニア領域では、アドバイスにあたって業種や職種別に専門的な知識が必要なため、元メーカー勤務でシニア層のベテランエンジニアを「キャリアカウンセラー」として複数配置しています。就業経験の浅い若年層に対してキャリア相談やスキル指導を行う仕組みを導入しており、業務の生産性だけでなく、一人ひとりのキャリア形成に寄り添っています。

 シニアの就労が拡大していくなか、雇用側はその特性を的確に生かし、個人個人の望む働き方を実現したいですね。

※本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。