“Z世代”と言われる最近の学生たちの就労観は…

谷出 営業主体の会社なら、業績トップの営業員が採用担当であるのがいちばん良いです。トップ営業員が採用担当者になったことで、仮にその売上がいったん0になっても、将来的に同じレベルが期待できる新人を3人採ったほうが長期的には会社の数字が上向きます。多くの会社が成績1位の社員を現場から外すことにはためらいがあるでしょう。人事部門への異動が無理なら、せめて、採用活動に深く関わってもらうこと。それだけで、新卒採用に対する会社の本気度が変わります。「学生を集めて会社を説明し、面接して、内定を出せばいい」という、ありきたりで無策な姿勢では、優秀な学生はいつまでも採れません。

 また、従業員300人以下の会社だったら、経営者自身が前面に出てほしいですね。自社の商品やサービスについて、いちばん自信を持っているのは経営者なので、採用プロセスを人事に任せながらも経営者自身が深く関わっていくことが大切なのです。

 企業との接点に加え、谷出さんは大学での講義やセミナーなど、学生との接点も多い。“Z世代*2 ”と言われる学生が持つ“就労観”はどのような傾向があるのだろう。

*2 「Z世代」は、一般的に、1996年以降に生まれた者を指す。多くの者が、IT環境の整ったなかで育ち、パソコンやスマートフォンへの知見も多く、情報リテラシーが高い傾向にある。

谷出 「やりたい仕事をやりたい」という思いがとても強いですね。でも、やりたい職種が見つからなくて悩んでいるとか、やりたいことを望むけど、そのために何をすればいいかが分からなくて悩んでいる学生もいます。それと、世の中のために何かをしたいとか、誰かの役に立ちたいという声をよく聞きます。いまから約30年前、新語・流行語にランクインした「24時間戦えますか?」といった世界観を全く理解できない世代です。「えっ?24時間?オンオフは?」と(笑)。

 昨今の企業の管理職であるバブル世代や団塊ジュニア世代とは明らかに価値観の異なるZ世代――彼ら彼女たちと向き合うにあたり、採用担当者や上司・先輩社員が気をつけることは何か?

谷出 頭ごなしの指示や目的の分からないものに対する拒否反応が強いことを知っておきたいですね。「これをしなさい」と目上の人に言われても、「それは何の意味があるのか?」と内心で思うことがあります。就活生は「自己分析しなさい」ともよく言われますが、「自己分析の意図はなんですか?」という質問を私に投げかけてくる学生もいます。

 それに対しては、私はこう答えます。

「企業は、面接に来た学生がどういう人物かを知り得ない限り、一緒に働けるかの判断ができないでしょう? 『あなたの考えを教えて』と人事部に言われたとき、自分のことをしっかり認識していないと自分の考え方を正しく説明できません。だから、自己分析が必要なのです」

 個人差はもちろんありますが、全体の傾向として、Z世代の学生は欲望がさほどなく、「お金儲けをしたい」という思いも少ないように見えます。彼ら彼女たちの多くは、いままでの人生を“ほどよく”生きています。日常生活が満たされている分、「○○をしたい!」という欲が生まれない。普通に仕事をして、普通に稼いで、その稼いだ範囲内で生活のやりくりをすればいいと思っているので、「仕事をたくさんして、お金をたくさん稼いで、家や車を買いたい!」とはなりません。人間関係で言えば、家族の繋がりを重んじて、ワークライフバランスや男子学生の育休への意識が高いようです。男女の役割へのこだわりとか、「家庭は男が引っ張るべき」といった価値観よりも、できる人がその役割をこなせばいいという考え方ですね。