政府の成長戦略会議は9月2日、今秋にとりまとめる予定の成長戦略の検討課題案を公表した。その一つが、金融機関同士の協議で債務を軽減する「私的整理」を円滑化する法整備だ。このような案が浮上した背景と、実現のための課題とは。(東京経済東京支社長 井出豪彦)
成長戦略会議が公表した
倒産抑制に向けた検討課題案
コロナ禍にもかかわらず企業倒産件数が異常な低水準で推移していることについては周知のとおりである。官民の金融機関が徹底した資金繰り支援を行っていることの証左だが、このいびつな状況は当然のことながら身の丈を超えた債務を抱える企業の大量発生を招き、どこかのタイミングで官民金融機関が抱えた不良債権の「出口戦略」が問題となる。
それは先刻、政府もわかっているようで、9月2日に政府の成長戦略会議は「事業再構築の促進のための私的整理円滑化の法制面の検討」「中小企業のための私的整理等のガイドラインの策定」を秋に向けた検討課題案として公表した。
現在私的整理に必須の全行同意の原則を緩和し、「令和の徳政令」とも言うべき新たな私的整理の制度を整備して倒産増加をできるだけ回避しようという腹のようだが、そんなにうまくいくのだろうか。