アーキテクトとは「全体構想家」のこと
このような状況下で必要となるのは、すでにある場からスタートするのではなく、何もない更地にゼロベースで線を引くという、あたかも何もない更地に建築家がどのようなコンセプトを持った建物の全体像をどのように描いてユーザの望む生活を実現するかといったような発想です。
そのために必要なのは、具体的事象の観察からそれを高度に抽象化して全体像やその構造を描く力です。
本連載ではこのような思考法を、先の建築家的な発想をさらに抽象化してビジネスも含めて広範囲に適用可能な抽象化思考を用いたものということで「アーキテクト思考」と定義しました。
アーキテクトという言葉は、近年ITの世界でもよく用いられるようになってきています。
ここでのアーキテクト思考を簡単に表現すれば、抽象度の高い全体構想をゼロベースで作り上げるための思考力のことです。
アーキテクトとは直訳すれば先の「建築家」を意味しますが、ここでは、それをさらにIT等のデジタルの構想やビジネス全般にまでも一般化して「全体構想家」であるとします。
本連載では、簡単にこのアーキテクト思考についてその意義、概要、具体的に求められるスキル等を紹介することで、近年求められることが多くなった抽象化思考の応用の一つの側面を紹介していきたいと思います。
ビジネスコンサルタント・著述家
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ、クニエ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)『具体⇔抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)等。
坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者・
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、日本コカ・コーラ、