コロナ禍における非正規雇用の派遣スタッフたち

“ハイスキル人材の時短派遣”の就労者側と雇用側のメリットを見てきたが、その一方で、世間一般的には“派遣”に対してネガティブなイメージがつきまとっていることも否めない。2008年のリーマンショック時、主に製造業界で働く多くの派遣労働者が契約を打ち切られたニュースもその一因だろう。ただ、少子高齢化が進むなか、国は労働力確保の一環として派遣労働者を保護する法律を整え*13 、企業もそうした法律を遵守するようになっている。2020年4月に「同一労働同一賃金*14 」が導入され、正社員との賃金格差が是正されることになったことも大きい。リーマンショック時とは、状況が大きく異なっているようだ。

*13 労働契約法改正(2012年)、労働者派遣法改正(2015年)。
*14 同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらやる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されるもの(厚生労働省「同一労働同一賃金」ホームページより)。

路川 緊急事態宣言時にも派遣労働者の雇い止めが懸念されましたが、事務系の仕事においてリーマンショックのような大きな影響は出ていません。これは政府が雇用調整助成金*15 などの施策を積極的に打ち出したことに加えて、派遣スタッフでもテレワークができるように派遣先企業が尽力したことも大きいですね。当社は、事務系のお仕事がメインのため、テレワークがしやすいこともあり、現在でも全国で約50%、東京23区に限ると約60%の派遣スタッフがテレワークをしています。このテレワークの比率は正社員とほぼ同じか、むしろ正社員より高いケースもあります。

*15 厚生労働省 派遣元事業主の皆様へ「雇用調整助成金を活用して派遣労働者の雇用の維持をお願いします」参照。

 緊急事態宣言下によるテレワークで、正社員として働く人のなかには会社へのエンゲージメントを下げて、働き方やキャリアを考え直して退職するケースもあるという。

路川 こうした社会情勢のなか、欠員が出るたびに未経験者を募集してゼロから育てる余裕のある企業は少なく、多くが即戦力となる人材を求めます。その穴をすぐに埋められるという意味でも、ZIP WORKERには一定のニーズがあるといってよいでしょう。これまで「フルタイムで働いてもらわないと困る」と思っていた企業も、否応なくテレワークを取り入れた結果、それが機能したことから「やってみれば、意外にできる」という実感を得て、働き方全般について柔軟な対応をするようになってきたように感じています。