ZIP WORKERはどのような就労をしているのか
ZIP WORKは雇用形態の名称ではなく、「豊富な経験や高いスキルを持つ人が週35時間未満の勤務*12 で、仕事に見合った高い時給を得る」という働き方を示すもの。求められるのは、主にエクセルやパワーポイントを平均以上に使いこなすスキルやIT関連の専門的なスキル、資料作成やデータ分析業務の豊富な経験などだという。もともとは「子育て中の母親がスキルを生かして無理のない時間で働けるように」ということで始まったが、蓋を開けてみると、男女問わず、介護と仕事を両立させなければならない人、資格取得のために勉強中の人、副業やWワークとして時短・日短での仕事を希望する人など、その事情は多岐にわたるものだった。特に最近では、デザイナーやライター、講師、インストラクターなどフリーランス(個人事業主)として働く人がWワーク・副業として派遣を選ぶケースも多く、全体の30%強に及ぶという。安定した収入を得ることが難しいうえ、雇用保険や労災保険に加入できないなど、不安要素の多い個人事業主にとって、時短・日短勤務で最低限の生活費を確保できる副業は貴重だ。登録さえしておけば自分で一から就職活動をせずに済むというメリットも大きく、不安定な社会情勢も相まって希望者が増えるのは自然な流れだといえるだろう。
*12 週1日勤務/4時間が最小。おおよその平均は週3~4日の勤務で25~30時間。平均からの1日の労働時間は7時間未満となる。(路川さん談)
路川 たとえば、ZIP WORKERのAさん(33歳・女性)はサービス業において週5日、1日5時間、専用ツールを活用したデータ抽出や加工などのデータ分析業務をされています。子どもが生まれても仕事を続けたかったというAさんは「諦めたり妥協したりすることなく仕事と子育ての両立ができて自己肯定感も上がり、毎日が充実している」とおっしゃっています。フリーランスで通訳と講師のお仕事をされているBさん(34歳・女性)もZIP WORKERとして外資系の化粧品メ-カ-で週4日、1日5時間、支出経費の分析、新規サプライヤーの登録、サプライヤーからの見積もりの管理、業務を効率化する新システムの導入など、購買業務全般に携わっていらっしゃいます。「本業から得られる経験と、会社という組織だからこそ得られる経験、どちらも得られるいまの働き方は、私にとってベストバランス」だと自信を持って語られています。
かつては、派遣スタッフが正社員から見下されるような傾向もあったが、そうした風潮も様変わりしている。その要因のひとつとして考えられるのは、現在の企業にはさまざまな雇用形態の働き手が入り交じり、コロナ禍によってそれぞれが必要に応じてリモートワークに切り替えるなど、働き方が多様化していることだろう。
路川 必要以上に会社だけにコミットするのでなく、多様なリレーションを形成する方も増えてきており、かつてあったような「正社員同士はプライベートでも親しくつきあい、派遣スタッフはその輪に入れない」といった話もほとんど聞かなくなりました。生産性を重視する企業においては、働き方に関わらず高いスキルを持つ人がリスペクトされる傾向にありますね。旧来の派遣労働のイメージにとらわれず、フレキシブルな働き方を必要としている方々に、ご本人が望む働き方を実現できるようチャレンジしていただきたいですね。