しかし、非連続な変化は国外でも起きていて、日本だけが変わらないようにしたとしても、周りの環境が激しく変化すれば、相対的に日本もその変化に巻き込まれることになる。これまでの強みを今後も活かすことも重要であり、変革の名の下にやみくもに全てを変えればよいという話ではないが、環境の変化に適応できるための変革は必要だ。

 日本の製造業が20世紀の成功体験をベースに、2000年代以降も垂直統合的な内製モデルを貫こうとした結果、中韓の新興企業に後れを取ったのも、こうした組織的な慣性が主要な原因だ。

実は申請書類から罫線を
なくした政治家として有名

 大学研究者の間では、河野氏は「科研費の申請書類から罫線をなくした政治家」としても知られている。罫線とはなんぞやと思われるだろう。大学の研究者は教育だけでなく研究も主要な業務であるが、その研究費は口を開けていれば降ってくるものではなく、競争的資金と呼ばれ、申請と審査によって、交付の可否や金額が決まる。そうした競争的資金の主要なものが国の研究予算である科学研究費助成事業といい、通称科研費と呼ばれている。

 科研費の申請には、研究のテーマ、その意義や実現可能性、研究費の使用用途の詳細など、事細かな申請書類に研究計画を記して提出し、審査を受けなければならない。提出すればもらえるような類の助成金ではなく、毎年半分以上の研究計画が却下されている、研究者にとっては死活問題となる大切なイベントだ。

 この科研費の申請、ほんの数年前までは紙ベースで申請書類をつくって送付しなければならなかった。しかも、定型のWordのフォームには手書きを前提とした罫線が引かれており、行ごとに改行をし、罫線の次の行に続きの文章を書く。書き直すときは、改行位置に合せてコピー&ペーストをして体裁を整えないといけないという、なんとも極めて面倒くさい様式であった。

 書式に罫線が入っているのは、申請書類を手書きで起票していたときの名残であり、手書きのときには罫線がある方が書きやすかったはずだからだ。しかし、多くの文書がPCで作られるようになると、罫線はむしろ邪魔な存在になる。このWordの書式から罫線をなくしたのが河野氏であった。自民党の無駄撲滅プロジェクトで河野氏が研究者からの要望を取り上げ、文科省に指示、罫線はなくなり、研究者は改行位置の調整を毎行気にすることなく、研究計画を書くことができるようになった。