庶民の「リベンジ消費」は
 “Go To再開”で成否が決まる

 では次に、庶民のリベンジ消費はどうなるのでしょうか。

 もちろん私と私の取引先がそう行動したように、お酒の提供が解禁になったことで10月は庶民的な居酒屋でのリベンジ消費が盛り上がりそうです。では、庶民のリベンジ消費も日本経済を引き上げるのかというと、ここは少し事情が異なります。

 ひとことで言えば、庶民の予算はかならずしもリザーブされているわけではありません。コロナ禍の巣ごもり期間に支出が減ったのは富裕層と同じですが、庶民の場合、残業代がなくなったとか、勤務のシフト時間が減ったといった理由でコロナの期間、収入も減っています。

 総務省が発表する家計調査で勤労者世帯の2021年4~6月期の実収入が一年前と比べてどうなったかというと、約3万7000円/月の減少です。一方で家計の消費支出は、約1万7000円/月増えています。

 日用品の相次ぐ値上げもあり、実入りが減ったのに支出は増えているのが庶民の平均像というわけですから、リベンジ消費に使えるような「未利用予算」があるわけではない。ここが大きな違いです。

 そこで、日本経済全体にとって重要なのが「Go To再開の意義」です。賛否両論がありましたが、旅行や飲食はGo Toで人工的に庶民のリベンジ需要を生み出すことが可能です。

 そもそもコロナ禍では不要不急の家計支出が大幅に抑えられました。具体的には旅行、外食、アパレル、イベントへの支出が手控えられ、関連業界は大きな打撃を受けました。

 このうち旅行と外食は需要の価格弾力性が大きいことが知られています。価格を下げれば、旅行に出かける人はそれ以上に増えます。昨年のGo Toトラベルで10月、11月に一大国内旅行ブームが起きたのはその実例です。

 国のGo To予算は、報道によれば今年度に2兆円繰り越されていると言います。この2兆円がいつ復活するかが重要で、予算投下が行われればその倍の4兆円の旅行需要と外食需要が経済に上乗せされます。そして旅行や外食が増えることで間接的にではありますが、ここまで壊滅的に需要が減ってきたアパレルや化粧品の売り上げも回復するはずです。

 菅内閣の時代はコロナをどう抑え込むかに政策の力点が置かれ、経済はその我慢のおかげで縮小しました。しかし抑え込んでも変異種が生まれ、ワクチンの効果も限定的だとわかってきた今、新内閣ではウィズコロナ、つまりコロナとの共生を受け入れざるをえなくなるでしょう。

 経済回復としてのポイントは、まだ賛否が分かれるGo To政策をいつどのように再開するか次第で、庶民のリベンジ消費の成否が分かれていくでしょう。