第一にデータ化、第二に体制づくり、第三に情報発信

 それぞれの企業が従業員との新たな関係性を構築するための「健康経営」――その推進にあたって重要となるポイントを、経営者や事業担当者はいま一度確認しておくべきだろう。

山田 必要とされるポイントが3つあると、私は考えています。第一にデータ化、第二に体制づくり、第三に情報発信です。

 第一のデータ化とは、繰り返しになりますが、健康経営をデータドリブンにするということです。データなしで健康経営に取り組んでもうまくいきません。どんな健康課題が事業成長を阻害しているのか――データをもとに仮説を立てたうえで各種の施策を導入しなければ、見かけだけのやりっぱなしになってしまうでしょう。イベントなど、具体的な施策を行う際も、何らかのKPI(重要業績評価指標)を設定し、どれくらい達成できたかを測定することが大切です。それも、自社が重視している経営課題や経営目標と紐づけた指標でないと意味のあるものにはなりません。たとえば、1週間で10万歩を歩こうという「ウォーキング週間」をやるなら、ただ歩数を測るのではなく、参加したことによって従業員同士の繋がりがどれだけ強くなったかを測る指標を設定し、データで評価し、従業員にフィードバックしていくのです。その繰り返しによって、企業と従業員のベクトルが揃っていくでしょう。

 第二の体制づくりとは、「どの組織部門が主体になって進めるか」ということです。企業規模などによって、主に、経営企画室、人事・労務(総務)部門、ウェルネスセンター、組合という4つのパターンがあります。どこが主体になるにしても、それぞれに得意・不得意があるので、初期は各部門が連携して推進するほうがよいでしょう。さらに取り組みが進んでくれば、CHO(Chief Health Officer)といったポジションを設けることが望ましいですね。「会社は本気で従業員の健康を考えている」ということが従業員に伝わります。

 第三に、情報発信です。「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」を取得することは、採用力の強化や顧客へのイメージアップといった効果をもたらします。特に上場企業にとっては、SDGsやESG投資の観点から、投資家に対するメッセージとなるでしょう。従業員にとっても、自社に対する誇りや親近感を醸成し、日々の業務におけるモチベーションアップに繋がるはずです。

「健康経営」の落とし穴は?企業が忘れてはいけない3つのポイント株式会社iCAREが開発・提供する「Carely」は、企業に眠る健康データ(健康診断・ストレスチェック・産業医面談など)を一元管理することで、人事課題を解決する健康管理システム。業種・規模を問わず、450社以上に導入され、今年2021年7月には、新型コロナワクチン接種歴と検温の記録機能の提供も開始した