求職するシニアにも“適性検査”は価値がある

 今回、仕事の“適性検査”を受けてみて、定年年齢の私は改めて自分の「いま」の特性を知ることができた。就職活動をしていた学生時代と変わった点、シニアになった現在でも変わらない点の両方があったが、検査の結果とともにその理由を知ることができたのは収穫だった。加齢による心身の衰えはあるが、下方への変化のすべてが「劣化」とは限らず、「成熟」と呼んでもいいのかもしれないと思った。60歳を過ぎて、仕事の一線を退くことが、「余生ではなく、人生のセカンドキャリア時代(の始まり)」というのは、人生100年時代においては、決して綺麗事の表現ではないだろう。

「DPI」をはじめとした、就労のための“適性検査”は、新卒採用や中途採用で使用されることを想定し、実際にそのように使用されているケースがほとんどのようだが、たとえば、「管理職研修」や50代のビジネスパーソンが受講するような「セカンドキャリア研修」でも使用は可能ではないか。20代、30代の新卒や中途の「採用」で使用する場合とは違い、テストの結果を従業員本人にフィードバックすることで、加齢とともに変化しつつある「態度能力(特性)」を本人自身が知ることは有意義ではないか。自分のそれまでのキャリアを棚卸しし、検査で明らかになった「特性」を踏まえれば、新たな仕事へのやりがいを創出できる可能性もある。そう考えれば、再雇用や役職定年を迎えたビジネスパーソンもテストの受検対象になり得るだろう。また、定年退職で職場を去るときに、企業の人事部が退職者にテストを受けてもらい、その結果を本人に伝えることは、何らかの仕事を続けたい退職者にとっては次のステップへの良い手土産になるかもしれない。企業からの“最後の福利厚生”と言ってもいいだろう。

「今後、シニア層がセカンドキャリアを求めて就職活動を行い、求人に対する応募者が増えたとき――つまり、就活するシニアを雇用側が選抜する必要が出てきたときは、業務実績(キャリア)以外での採用判断基準が必要となるでしょう。そうした理由で『DPI』が注目される可能性はあります。シニア層は社会の中で働いてきた人たちなので、面接の場ではしっかり話せる人も多いです。しかし、何を問われているかが一見分かりにくい(適性検査の)設問に対する回答は、人物の『態度能力』を適切に見極めることができます。『求める仕事をできる人かどうか』という判断に加え、『組織内の人間関係でうまくやっていける人かどうか』という判断もできるでしょう。求職するシニアの人となりを理解する情報源になり得ます」(蓬田氏)

 蓬田氏の言葉を受けてさらに言えば、シニアである自分の「いまの特性」を知ることは、企業への再就職時に限らずに価値があるはずだ。60歳を過ぎた自分の今後の行動=生き方への指針を得るために、自分を知るための“客観的なモノサシ”はあったほうがいい。そのモノサシのひとつとして、「DPI」のような“適性検査”が十分な役割を果たすだろうと思った。

編集部注)職場適応性テスト「DPI」は、法人のお客様を対象にしており、個人のお客様への販売はありません。