「変化しやすい特性」「変化しにくい特性」とは?
注目すべきは、「職場適応力」となる14の特性(項目)には、同じ受検者でも「変化しやすい特性」と「変化しにくい特性」があることだ。
「DPI」のデータ分析等を行う蓬田尚志氏は、次のように解説する。
「『活動性』や『指導性』など、行動が能動的である態度を示す項目は、自身の行動を意識して変えることによって比較的変化しやすいものと言えます。それに対し、『持久性』などの、行動が受動的である項目や『思考性』や『共感性』のように習慣に近い行動の項目は、比較的変化しにくいです。また、『自己信頼性』や『感情安定性』といった情動に関係する行動傾向は、より変化しにくいものと言えます」
新卒社員は次第に職場環境に慣れていき、経験を重ねることによって業務スキルを向上させていく。すると、「DPI」のスコアも変わっていくわけである。
「就労に伴う時間経過での(スコアの)変化を直接取ったデータはありませんが、20代、30代といった年齢世代別に分類すると、年を経るごとに変化すると見受けられる項目がいくつかあります。たとえば、『共感性』や『思考性』は20~30代よりも40~50代のほうが相対的に平均値は低くなっています。設問の内容から、『共感性』は他者への興味や関わり合いを求める傾向のことであり、若い人のほうが他者に興味を持ち、他者との関わりを強く求める傾向が強いと言えます。また、『思考性』は、深く考える、行動の前に思考をはさむといった傾向を指しますが、年を重ねると深く慎重に考えることが難しくなるとも考えられます。逆に、『自己信頼性』は、経年での変化は少ないながらも年齢が上がるにつれて高くなる傾向があります。『自己信頼性』は自分の行動に対する感覚的な自信を表す項目なので、長く生き、経験を積み重ねた人のほうが高くなることは理解できます」(蓬田氏)
そこで、定年年齢の筆者が「DPI」を実際に受検してみた。およそ40年前の就職活動時に受けて以来、今回が2度目である。過去の記憶を手繰り寄せて、前回と今回の結果を比較してみると、蓬田氏が指摘するようないくつかの“変化”が確かに見られた。