特定技能制度を使う企業はまだ圧倒的に少ない

 特定技能に資格変更する技能実習生が増えている状況だが*12 、たとえば、職を変える場合に、新しい仕事はすぐに見つかるのだろうか? 外国人の動向を目の当たりにし、関係各所とのコミットが多い岡﨑さんはこう解説する。

*12 出入国管理庁「新型コロナウイルス感染症の影響により実習が継続困難となった技能実習生等に対する雇用維持支援」参照

岡﨑 仕事の見つからない方が多いですね。理由はいろいろあるのですが、「特定技能」について言えば、まず、特定技能制度を使って外国人を採用しようとする企業さんが圧倒的に少ないです。そもそも、「特定技能」自体を分かっていない企業さんが多いようです。たしかに、制度としてもややこしいので、登録支援機関でさえも完全には理解していなかったり…そのことが、「特定技能」での職探しで外国人が苦労する一因でもあります。

 コロナ禍で外国人の新規入国はほとんどありません。そのため、この1年で増大した特定技能の外国人は技能実習が終わった方が特定技能にスライドするケースが目立ち、いま現在で言えば、特定技能の外国人を採用している企業は、技能実習生をもともと採用していた企業が多いです。技能実習生を受け入れたことがなく、特定技能制度で初めて外国人を雇う企業さんはほぼないようです。

 

「技能実習制度」は、「日本からの技術移転を通じた、開発途上国への国際協力」が表向きの理由だが、実際は、“労働者確保”が雇用者の制度利用の主な動機になっている。また、単純労働も認められている「特定技能」は、政府自らが中小企業などの人手不足を解消する目的で作った制度といっても過言ではない*13

*13 「技能実習」は、作業レベルまで細かく内容を決めたうえで、それ以外の仕事(作業)をさせてはならないという規定があり、「特定技能」のほうが業務範囲は広くなっている。

岡﨑 「人手不足だから、技能実習か特定技能で外国人を受け入れてみよう。ふたつの制度はそれぞれ違うから、外国人への対応方法も変えなくてはいけない」という姿勢は正しくないと思います。本来あるべき姿は、自社で必要な仕事のポジションをしっかり考え、そのポジションを埋める人材として技能実習が良いのか特定技能が良いのかを判断することでしょう。「賃金が安く済むから技能実習にしよう」とか、「制度が分かりづらいから特定技能は止めておこう」といったものではなく、どういう人材が必要なのかという視点で制度を選び、それに見合った外国人を受け入れてほしいですね。