「自己肯定感」も「自己効力感」も変化していくもの
学生や就労者の「自己肯定感」「自己効力感」が高くなったり低くなったり…時と場合によって変化することも、学校の教師や企業の管理職を悩ませている。
「自己効力感」は自らの失敗体験や厳しい状況を目の当たりにすることで下がっていく。自分の行動が失敗だったと思ったり、評価が悪かったことで自信を失ったりするケースである。
「自己肯定感」は「自己効力感」に比べると安定しており、短期間で変化することは少ない。ありのままの自分に価値があると思う「自己肯定感」の高い人は、できることやできないことが増減しても自分を肯定的・好意的に見つめ続けていく。
まとめるとこうなる。
「自己肯定感」は、「自分にはさまざまな特徴があり、ありのままの自分には価値がある」と思う “自分に対する評価”。この場合、自分の価値が他者との比較によって変化しないことが重要である。
「自己効力感」は、「自身の体験や周囲の励ましを受けて、自分は行動できるだろう」と認識する“自己の可能性の判断”。「自己肯定感」とは違い、「体験の積み重ね」であり、成功した体験よりも失敗した体験のほうが強く印象に残るため、下がる方向に変化しやすく、上がる方向へは変化しにくい。
「自己肯定感」と「自己効力感」のどちらも高い人、「自己肯定感」と「自己効力感」のどちらも低い人のパーソナリティは想像がつきやすい。どちらも高い人は自分というものをしっかり持っていて、過去の体験から自信を持って行動し、失敗を過度に恐れることがない。
「自己肯定感」と「自己効力感」のどちらも低い人は自分に自信がなく、行動力に欠け、自分自身に対しても否定的にとらえ、自分の価値を信じていない。
では、「自己肯定感」が高くて「自己効力感」が低い人、「自己肯定感」が低くて「自己効力感」が高い人はどのような人物か。
「自己肯定感」が高くて「自己効力感」が低い人は、「できない自分」を分かったうえで自分のことが好きであり、自分の存在には価値があると思っている。しかし、体験に基づく自信がなく、誰かに指示されても必要に迫られなければ「やらないでおこう」と考えるような人物だ。
「自己肯定感」が低くて「自己効力感」が高い人物は、私はあまり想像できない。自分の価値に否定的でありながら、体験に基づく自信があるために行動を起こしやすいという姿勢は考えづらい。自分を肯定した状態でなければ体験を成功したと見なすことができず、結果、体験に基づく自信も生まれないので、「自己効力感」は生まれないのではないか。