人材採用における「自己肯定感」と「自己効力感」
企業の人材採用活動において、「自己肯定感」と「自己効力感」の双方が高い人物は将来有望と見られることが多い。それは、採用に用いられる適性検査などで「自己肯定感」や「自己効力感」が測定されていることからも分かる。
また、採用面接で就活生がよく尋ねられる「学生時代に力を入れたこと」は、エピソード内での行動が企業の組織内で再現可能であるか、そして、その経験を通じて自分(就活生)がどのように成長したと認識しているかを面接官が知るためのもので、「自己肯定感」や「自己効力感」の高低を確認するものである。
大卒者の新規採用における通説に、「体育会系の部活を4年間続けた者は優秀だ」というものがある。これは、在学中に体育会系の厳しい部活動を頑張った人は「苦しい練習を乗り越えた」「試合に勝った」という達成体験や励まし合いながら努力するといった経験を経て、「自己効力感」の高い人が多いという推察からだろう。
しかし、「自己効力感」は、過去の体験をもとに自信を獲得し、維持するものなので、うまくいかない状況が続くと次第に下がっていくことに留意しなければならない。就職活動を始めたばかりの段階では自信にあふれていた学生が採用試験に落ち、大学4年の夏から秋にかけて自信を失っていくケースなどである。思うようにならない体験を続けていくことで、「自己効力感」を維持できず、結果として面接での受け答えや態度に自信のなさが表れていく。
「自己肯定感」と「自己効力感」のうち、採用場面でより注目すべきは「自己肯定感」のほうだろう。
「自己効力感」は状況によって変化しやすいため、採用場面で「自己効力感が高い人物」と判断しても一時的な評価となる可能性が高い。それに対し、他者との比較ではない“適切”な「自己肯定感」は就活生の自分自身に対する評価であり、変化が少ないので採用時の判断が正しいものとして就職後の評価にも使える可能性が高い。
「自己肯定感」の高低は、学生が自身の得手不得手を把握しながら自分の価値を認識していることを面接やグループディスカッションで見極めることができるだろう。ただし、繰り返し述べているように、他者との比較による「自己肯定感」もあるので、その点は人物像の判断に注意が必要となる。