「羊の魅力を伝えたい!」
三星毛糸がつむぐ物語

入山 あともう1つ、似たような話があります。

 岐阜羽島に三星(みつぼし)毛糸という会社があって、ここの岩田(真吾)くんも、めちゃくちゃおもしろい。彼はBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)を出て、家業の毛織物の染屋をやっています。

 三星毛糸は今、スーツ生地の直販などをしていて、一番取引しているのがゼニア(Ermenegildo Zegna)です。

 岩田くんの話では「ゼニアはもともと生地メーカーだったので、ゼニアのプロの人たちは、スーツの生地を触った瞬間に羊の種類がわかるくらいだ」と。

尾原 あははは(笑)。ワインのようですね。

入山 そういう「生地マニア」の世界があるらしくて。

 コロナ前に聞いた話ですが、彼は「生地の源流は羊だから、これから『羊ツーリズム』をやる」と言っていました。

 コロナ禍で海外に行けないので、第一弾としてニュージーランドでドローンを飛ばすという。

尾原 なるほど! ドローンで、「この羊から生地が生まれる」というリアリティーを持っていただくと。

入山 「ここで育ったこの羊があなたの生地に」みたいなね。

 つまり、感性のいい起業家たちは、ストーリー価値やプロセスエコノミー価値に気づいていたんです。ただ、言語化はされていなかった。それをこの本で、全部言語化していただいたと思っています。