習近平が打ち出した「国境なき標準化工作」、日本企業も警戒すべき理由Photo:PIXTA

習近平新時代の行き先は?
見据える「2049年」の目標

 イノベーション企業への規制強化、共同富裕、恒大ショックなど、昨日、第3四半期の経済成長が4.9%増と発表された中国経済への予測や期待値を下げる動向が続いている。中国市場の信用性、企業収益などに与える打撃が懸念されている。本連載でも繰り返し検証してきたように、これらは表象にすぎない。

 根幹にあるのは、習近平新時代そのものである。

 市場経済や改革開放という大義名分の下、成長最優先、「先富論」の容認と推進、そのために欧米日を含めた資本主義国家との外交関係を安定的に管理してきたのが、鄧小平旧時代であった。

 一方で、中華民族の偉大なる復興という「中国の夢」を掲げる習近平新時代では、共産党による絶対的領導の下で全ての生産要素が動かされることになる。旧時代で富や財を蓄積した勝ち組を逃がさず、トップダウンで制定したルールや方針の下で、いまだ人口の半分以上を占める低所得者層への再分配を要請する。共同富裕という大方針の下、経済全体、人口全体を「底上げ」していかないと、「国家目標」は達成されないと習近平は考えている。

 国家目標とは、2011年から2020年の10年間で倍増させたGDPと1人当たりGDPを、2021年から2035年の15年間でさらに倍増させること。その過程で、経済力、軍事力で米国を追い抜き、台湾問題を解決する、すなわち「祖国の完全統一」を実現することである。

 これらの歴史的使命を達成することなしに、2049年という建国100周年(二つ目の100年目標。一つ目は2021年の中国共産党結党100周年)を迎えることはあり得ないというのが習近平の立場である。

 従って、目下の中国で起こっている変化は、中国経済の減速、民間企業への打撃、デフォルト、バブルの崩壊といった次元の問題ではない(これらも当然軽視できないリスクであるが)。全ては習近平という、歴史的使命を背負った“紅い皇帝”が掲げた、2021年から2035年、そしてその先にある2049年に向かって水平線のごとく延びていく国家目標に由来すると考えるべきというのが、筆者の根本的な見解である。