「恒大ショック」に対処する
中国共産党の狙いとは
中国の不動産大手、中国恒大集団(チャイナ・エバーグラン・グループ)がデフォルト(債務不履行)危機に陥っている。放漫経営や行き過ぎた事業拡大は、総額約33兆円とされる負債を積み上げた。期限の迫る社債の利払いは絶えず、すでに利払いを見送った米ドル債もある。30日の猶予期間中に支払えるかどうかも不透明だ。
「中国版リーマンショック」とも称される恒大ショックは、同社が破綻するか否か、政府は救済するのか、その場合どこまで手を差し伸べるのか、不動産市場全体への影響はどうなのか、金融システムの安定性は保たれるのか……など、さまざまな要素が複雑に絡んでいる。
一方、中国共産党が持続的に正統性を維持できるか否か(言い換えれば、中国が“崩壊”しないか?)を最大のテーマに据える本連載の立場から見れば、習近平総書記(以下敬称略)率いる中国共産党指導部が、究極的に唯一関心を持つのは、恒大ショックが党の正統性にどのような影響を及ぼすかに他ならない。あらゆる手段を駆使して正統性への悪影響を軽減すると同時に、状況次第では戦略的に利用し、正統性を強化する、というものである。
中国には「危中有機」(ウェイジョンヨウジー)という格言がある。文字通り、「危機の中に契機が有る」――。より掘り下げて言えば、「危機こそ契機」「ピンチはチャンス」という意識の下、壊滅的な危機が訪れなければ、起死回生の契機など見いだせないという意味すら込められている。中国人の処世術ともいえる。
ここでは深入りしないが、新型コロナウイルス、自然災害、米中関係、香港問題、台湾問題……中国共産党は「危中有機」の精神と原則に基づいて、危機対応→問題処理→契機創出を狙っているというのが筆者の解釈である。
恒大ショックも例外ではない。