どうせものを買うんだったら、
永久にごみにならないものを買うのが一番環境にいい(山口)

世界をよりよいものにするために、私たちがいますぐできる、ある行動とは?山口 周(やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。 慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史専攻修士課程修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』『ニュータイプの時代』(ともにダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)、『思考のコンパス』(PHPビジネス新書)など。神奈川県葉山町に在住。

山口 僕は家事は総合芸術だと思っています。あれほど広範な美意識を求められるものってないわけです。ファブリックはどうする、家具はどうする、音楽は、料理はなどなど、芸術のジャンルにまつわることというのは、すべて家の中にあるんです。それを人は家事っていう行為を通じて、お金をかけてつくっていくんで、これこそまさにある種のクリエイションであり、芸術行為なんです。そこに意識が向くとその先には、何を選ぶかということになる。例えば、開化堂さんの茶筒をキッチンにたまたま置いてるだけかもしれないですけど、その一つひとつのシーンとしてある種の作品をつくってるっていう感覚はぜひ持ってほしいなと。この消費アクティビズムという感覚は、日本ってものすごく弱いんですよね。先進国の中で断トツ低いんです。

細尾 そうなのですか。

山口 断トツ低い。でも、逆に言うと、日本はだいたい10年から20年遅れて海外の状況に近づくので、ここから先、10年ぐらいのスパンで急速に変わってくる可能性があります。どうせ買うんだったら永久にごみにならないものを買うのが一番環境にいいんで、そういったものを買おうとか。そういう意識が高まってくると状況が変わってくるなと思うんです。

細尾 ほんとに開化堂さんのお茶筒は、いろいろ茶筒がある中で、その100倍ぐらいするかもしれませんが、でも開化堂のお茶筒は100年後も使える。

山口 永久に使えるわけです。

細尾 そうなんですよね。

山口 永久にごみにならない。

細尾 いまでも開化堂さんのお茶筒をいろんな人が買ってるというのは、やっぱり何か価値観の転換期が来てるというか。コロナ前から来ていますけど、コロナを挟んでより加速した感じがありますよね。

山口 そうですね。そういう価値観を日本が世界にデモンストレートできると、これまでとは違うプレゼンスを世界で出せるのではないでしょうか。やっぱり日本ってリスペクトすべき国だよねっていう感じに、またなれるんじゃないですかね。人間と同じで、ちゃんと成熟していくというか。日本はまだ十分やれると思います。