勤務時間の自由度は低下し
業務負荷が高まった現実

 2019年の改正労働基準法などの法令施行によってどのような課題が表出したのでしょうか。

 ひとつに、法令施行によって労働時間の管理が強化されれば、勤務時間の自由度が下がったと感じる人が増えることが考えられます。働き方の柔軟性を表すIndicatorIII-4「勤務時間や場所の自由度が高い」は勤務時間の自由度と勤務場所の自由度によって構成されています。その推移をみると、2016年の32.9ptから2017年の34.8pt、2018年の35.6ptへと徐々に上昇していたものが、2019年には34.7pt(前年比▲0.9pt)へと低下しており、勤務時間の自由度の低下が背景にあると考えられます(図表3参照)。

 また、業務量の調整なしに労働時間の管理が強化されれば、労働時間の縮減が進む中で、時間あたりの仕事の密度が上がります。それによって、業務負荷を感じるようになった人も増えると考えられます。業務負荷の状態を表すIndexV「ディーセントワーク」の構成要素であるIndicatorV-1「仕事量や負荷が適切である」をみると、2019年には低下(59.8pt、同▲1.2pt)しており、業務負荷の高まりがみてとれます。

 さらに、IndicatorV-5「安全な職場で本人も健康である」(48.3pt、同▲0.4pt)も2019年には小幅ながらに低下しています。業務負荷の上昇によって、心的負荷も上昇し、健康状態の悪化につながった様子が表れています。

 2019年は労働時間の短縮をはじめとした働き方改革における大きな進化が起きた一方で、これまで見えていなかった課題がいよいよ顕在化した1年だったといえるでしょう。では、これらの動きは2020年のコロナ禍において、どう変化したのでしょうか。

コロナ禍でテレワーク増えるも
働き方の自由度は微増にとどまる

 2020年の動きを見ると、IndicatorIII-4「勤務時間や場所の自由度が高い」(35.1pt、前年比+0.4pt)とIndicatorV-1「仕事量や負荷が適切である」(62.4pt、同+2.6pt)は、ともに改善していることがわかります。特に業務負荷の水準は大きく改善しています。

 IndicatorIII-4「勤務時間や場所の自由度が高い」は、前述したように、勤務時間の自由度と勤務場所の自由度の両方から成り立っています。2020年は、新型コロナウイルス感染症のまん延防止として外出自粛が求められたことで、テレワークを実施する企業が増えました。テレワーク制度の導入や実施が大きく拡大することで、勤務場所の自由度が高まる人が増えたと考えられます。